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久遠の神話
第五十三話 十一人目の影その九

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「安心していいから、そのことは」
「だといいけれどさ。姉ちゃん酔うと凄いから」
「凄いってどう凄いのよ」
「だから酒癖悪いじゃない」
「えっ、そうだったの」
 上城は零のその話に赤くなっている顔で問うた。
「村山さんって酒癖が」
「かなり飲まないと大丈夫ですけれどね」
「大丈夫ってどれ位?」
「日本酒で一升瓶一本です」
 一・八リットルである。
「そこまで飲まないと崩れないですけれど」
「ワイン二本位だったら大丈夫だよね」
「ワインと日本酒ってアルコール濃度一緒ですよね」
「うん、そうだよ」
 だからライスワインと呼ばれる場合もある。ただワインと日本酒では味がまた違っている、それにワインは赤やロゼもある。
「それにワインのボトル一本は七五〇だから」
「二本でも一升にならないですよね」
「絶対にね」
「じゃあ大丈夫です。けれど」
「飲み過ぎたらなんだ」
「本当にうちの姉ちゃん酒癖悪いですから」 
 零は警告する顔で上城に話す。
「気をつけて下さいね」
「何か信じられないけれど」
「うちの家系って代々酒は強いですけれど癖は悪いんです」
 酒癖はその強弱とはまた別だ、それはそれなのだ。
「それもかなり」
「かなりって」
「姉ちゃんも気をつけてくれよ」
 零はむっとした顔で姉にも言う。
「酒癖は身を滅ぼすからな」
「私そんなに酒癖悪いかしら」
「相当ね。暴れるし」
 酒乱であるというのだ。
「笑うし歌うし、騒がしいから」
「暴れるの、私って酔うと」
「この前一升飲んだじゃない」
 その一升である。
「それで酷いことになったから」
「そうだったの」
「うん、本当に気をつけてよね」
「何か私って」
 樹里は弟の言葉に嫌な顔で言った。
「酔いどれ親父みたいじゃない」
「みたいっていうかさ」
「そのものっていうのね」
「親父じゃないけれどね」
 流石にこれは違った。
「まあ居酒屋で酔って暴れる女子大生みたいだったよ」
「あまりいい例えじゃないわね」
「八条屋によくいるね」
 八条グループが経営している居酒屋チェーンだ。安い、美味い、早いの三拍子の豊富なメニューと社員の勤務体制のよさで知られている。
「ああした感じだよ」
「それは白鯨とか?」
 スタープラチナの上の階の居酒屋だ。
「それとか?」
「うん、そんな感じだったよ」
「嫌な話ね」
「嫌だったら飲む量は考えてね」
「一升は駄目なのね」
「あとその前にさ」
 その日本酒を一升飲む前にだというのだ。
「姉ちゃん爆弾酒もやったから」
「ああ、あれね」
「あれよくないから」
 ビールの大ジョッキの中にウイスキーを並々と入れたコップを入れて飲むものだ。はじまりは韓国軍であるらしい。
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