第一部
SlumX
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「夢だ。」
これは絶対夢だ。
「夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ」
夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ
「あ...あぁ......」
血まみれになった『それ』は確かに数時間前まで動いていた私の“家族”だった。
一人は瞳孔を大きく広げ口から血を垂らしている。
一人は首と身体が別々の所にある。
一人はお腹から内蔵を覗かせている。
一人は誰か見当がつかないくらいぐちゃぐちゃに潰れている。
一人は庇ったのか自分より小さな子を抱きしめ一緒に心臓を貫かれている。
一人は別の子に抱かれ急所を矛が貫通している。
一人は助けを求めたているかの様に涙でぐちゃぐちゃな顔でこちらを見据えたまま泡を吹いて倒れている。
そして転がる子供たちの中心に真っ黒な“陰”が立っていた。
その陰は私に気づいたのか、ゆっくりと振り向く。
「ぁ...ぅあ......」
お前がやったのか、そう聞きたいのに上手く言葉が出てこない。
「依頼だからだ」
「!」
その黒い陰は私の“問い”に応える。まるで心が読めているかのように。
ゆっくりとそいつが近づいてくる。
「いやぁ、良くやった」
瞬間,後ろから手を叩く乾いた音が聞こえた。私はばっと振り返り、その音と声の主を確かめた。
そいつは太っていて私たちみたいな服とは比べ物にならないような綺麗な服を着て、首や手首に輝かしい沢山の宝石のついた飾りをしている。指には豪華な指輪をこれでもかと言う程つけていた。
一目みただけでそいつが”貴族”だという事が分かった。
何故こいつみたいな奴がこんな所に居るのだろう。
ゆっくりと近づいて来た黒い男は私の数歩前で止まる。
「ん?おい、『カゲ』。まだドブネズミが一人残っているではないか」
私に気づいた貴族は、その『カゲ』と呼ばれた男に言った。
「まさか....お前.......」
「何だ、口を開くなドブネズミ。さぁ、カゲ。さっさとこいつも殺してしまえ」
微かにそいつの頬が上がる。そしてその憎たらしい目で私の家族を見て、
「そこのドブネズミたちのようにな」
ブツ、と 私の中で何かが切れる音がした。
そこからの記憶はない。
気づいたら私の足下には首が異様に折れ曲がったあの太った貴族の男が横たわっていた。『カゲ』と言う男もその場から姿を消していた。
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