第二話 方程式の解
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正直に今の状況が理解できていなかった。
陸士108部隊に入ることになり、ようやく仕事をしている感を得られると新人メンバーで思っていたのだが、やらされる事はしょうもない地道な仕事ばかり。
正直に言えば詰まらないと思っていた。
自分も訓練校で訓練課程を終えて、ここに来たものなのだ。確かに経験量などでいえば自分達が劣っていることは自覚しているし、自分の魔力量がかなり多いというわけではない。
エース級の人間と比べたらそれは弱いくらいは流石に自覚している。
しかし、エース級の人以外の人間であるならばいい勝負くらいに持ち込むことができると。
隊士の一人はワイヤートラップにかかる0.1秒前までそう思っていた。
地味な仕事をしている自分達に珍しく集団訓練をゲンヤ・ナカジマ隊長の命を受け、それぞれがデバイスの用意をして訓練所に行かされた。
すると、隊長の言葉通りであったら相手は教導官ではなく嘱託魔導師らしい。何故か、言葉を濁して断言しなかったのが気になるが。
相手の詳細を聞こうとしたところで返ってきた返答は
「スタートはお前さんらが訓練所に入った瞬間。実戦だと思って頑張ってくれ」
最後の頑張ってくれ、という台詞にこの訓練によって自分達がどうなるかを隊長は示していた。
上司で年上だが、馬鹿にして、と本気で思った。
相手がどんな人物かはわからないが、説明された人物は一人だ。
いや、意外と嘘を言っているかもしれないが、もしも真実であるとすれば度し難い。こちらは12人いるのだ。一人一人がエースクラスになれなくてもこれだけ揃えば一撃を入れることは可能か不可能で言えば可能の領域に入る。
だから、皆で勝って隊長の評価を覆してやろうぜ、と笑って訓練室に入った瞬間に轟音と共に仲間の一人が凄い勢いで飛んだ。
「……は?」
阿呆みたいな声が空気に伝導するのが解ったが、周りも似たような面を晒していて何故か自分一人だけではないという連帯感が生まれる。そして同時に何やら音が響くが興味の対象は友人の運動エネルギーの推移である。
人間が一体、どうしたらあんな立っている状態から後ろに吹っ飛ぶことができるのだろうか。人間の新たな可能性の一つだろうか。
そんな事を思っていると
「……!」
隣の仲間が汗すら吹き飛ぶ勢いで後ろに飛ばされるのを見て、ようやく今が危険だと警報を鳴らしたかと思うと体に染み込まされていた訓練の動きが体を動かさせた。咄嗟にデバイスを起動し、防御魔法を張りつつ市街戦を想定した街並みの中の横にある建物の一つに体を飛ぶように隠す。
他の仲間も同じように体が動いたのか、三人がこちらに残りがばらばらに別れた。
仲間達が吹っ飛んだ方向は後ろであった。ならば、魔導師は正面からの狙撃をしている……と考えたい。
質量兵器
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