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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第26話 「文民統制」
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肉食獣の笑み。

「あ」
「い、いたい」
「なにやってんだか」

 おお、皇太子殿下がアンネローゼの頭を、ぽかりと叩きました。
 両手で頭を押さえたアンネローゼも、正気に戻ったようです。
 叩いて直るとは、アンネローゼ、恐るべし。
 それはそうと問題は、ラインハルトです。
 なみだ目でジトッと皇太子殿下を上目づかいで睨んでいます。
 うむ。かわいい。

「あ、マルガレータの口元に涎が」

 なにを失敬な、きみぃー。
 失礼な事を言うものではないよ。
 ラインハルトがかわいくないとでも、言いたいのかね?

「それとこれとは問題が違う」
「皇太子殿下に、しがみついているラインハルトは、かわいいではないか」
「だから、問題が違う」

 ■宰相府 ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム■

「で、同盟は動いたか?」
「まだのようです」

 モニターの向こうで、オーベルシュタインがあいも変わらず、無表情に近い顔で言う。

「そうか、こちらの出方を見てるんだな」
「大規模な挟撃を、警戒しているようです」
「はっ、動きたくても動けない。ざまぁ〜みろ」

 けっけっけ。主導権はこちらが手にしておく。
 下手に動けば、泥沼に落ち込む。
 奴らもカリカリしてる事だろう。こっちは動くぞ、と脅しているだけだからな。
 しかし動けば、八個艦隊で袋叩きに合うのは確かだ。
 さて、次の問題は、と。

「トリューニヒトは来たか?」
「そちらもまだです」
「やっぱり、なー」
「やはり?」

 あの野郎もこちらの様子を窺ってやがる。
 来るとしたら、両軍が動いた隙だろう。
 そのタイミングなら、イゼルローン攻略戦にも大規模な挟撃に対しても、無責任でいられる。移動中だったという言い訳をほざくつもりだろう。

「あの野郎はな、恥というものがない。普通の人間なら、恥ずかしいと思う事でも平然とする。その上悪びれる事もない。強かと言えば、言えるだろう。それだけにやりにくいぞ」
「罪悪感のない人間ですか?」
「まあ、そうだ。そして門閥貴族達のように愚かではない。バカじゃないんだ。頭が良くて、恥を知らず、罪悪感のない人間。どうだ厄介だろう」
「確かに、そうですな」
「したがって奴と交渉する際は、最初から妥協点を織り込み済みで、条件を提示しろ。それ以外は事務的に、だ」
「なるほど、そういう事ですか。妥協点を探りあうなという事ですな」
「そうだ。普通交渉の際は、それぞれ飲める妥協点を探りあう。しかし奴には無用だ。最初の条件が一番良い条件。それを徹底しろ。奴に手柄を立てさせるな」
「なら、複数の人間とともに話し合う。それも必要ですね」

 密室で話し合うなど、自殺行為だろう。
 とにかく奴とは、ま
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