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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第26話 「文民統制」
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いのか、だ」
「わたしは……分かりません」

 宰相府に来る前は、ラインハルト様とともに、アンネローゼ様を救いたいと思っていました。
 ですが、今は何をしたいのか、それすら分からないのです。

「まあ、いい。卒業まではまだ間がある。だがちゃんと考えておけよ。時間を止めるために、時間を浪費するなよ。いいな」

 皇太子殿下の声は優しく、わたし達の事を、本当に考えてくれているのが分かります。

「はい」

 わたしはそう言うしかできませんでした。
 将来何をしたら良いのか、わたしは何をしたいのだろうか?
 これまで考えた事もなかったのです。

 ■宰相府 マルガレータ・フォン・ヴァルテンブルグ■

「このぼけーっ!!」

 怒号が部屋中に響き渡りました。
 ラインハルトの叫び声です。
 部屋に入ってきたかと思うと、いきなりです。
 いつも以上に気合の入った女装姿。化粧もばっちりでした。
 ああ、それなのに。それなのにー。

「いきなりなんだ?」
「キルヒアイスになにを言ったぁ〜。すいぶん悩んでいるんだぞ」
「将来についてだ」
「キルヒアイスは、ずっと……」

 ラインハルトがそこまで言ったとき、皇太子殿下が頭をぺしっと叩きました。

「ラインハルト。お前もちゃんと、自分の将来の事を考えておけ」
「俺は軍に入って」
「お前が士官学校を卒業する頃には、戦争は終わってるかもしれんぞ。軍の規模も縮小する事になるだろう」
「幼年学校を卒業したら、すぐに」
「ラインハルト。高々幼年学校を卒業したぐらいで、一人前になれると思うなよ」
「うるさい、うるさい、うるさーい」

 皇太子殿下がパシッと再び、ラインハルトの頭をはたきました。

「軍人になりたいというなら、止めたりはせん。普通科に行って別の職業につくのも良いだろう。だが、幼年学校を卒業したぐらいで、実戦に投入させるほど、俺は甘くないぞ」
「がるるー」

 うわー。さすが姉弟。
 アンネローゼにそっくりです。
 皇太子殿下はしらっとした表情で見ているのが、がっくりです。
 あんなにかわいい子が、上目づかいで見ているというのに。
 皇太子殿下は分かってない。
 まったく分かってない。
 ぽかぽかと皇太子殿下の肩を叩いているラインハルト。
 ううー。なみだ目なのはかわいいです。

「ぶれないわねー。マルガレータは」

 エリザベートが肩を竦めました。
 なにを言うか、貴方もショタの癖に。
 ジークを嘗め回すように、見てるくせにー。

「ラインハルト、かわいいわよ」
「あ、姉上……。そのすっきりした表情は?」
「ふふっ、あーはっはっは」

 アンネローゼの高笑い。
 恐ろしい女よ。
 あれはまさしく
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