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銀河英雄伝説〜悪夢編
第三十六話 来たよ、来た来た、ようやく来た
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司令長官もモートン提督も兵卒出身ですが私はその事を気にしたことは有りません。カールセン提督に対しても同様です」
「それは有難いですな。しかし面白く思わない人もいる、ルグランジュ提督もその一人です」
「……」

「他にも私が第一艦隊の司令官という事が面白く無いようです」
「なるほど、第一艦隊ですか……」
第一艦隊には首都警備の役割も有る、いわば近衛部隊のようなものだ。兵卒上がりのカールセン提督が司令官では面白く無いという事か……。その裏には自分こそがという思いも有るのだろう。

「面白く無い感情はウランフ提督に対しても有りますぞ」
「私にですか?」
カールセン提督が頷いた。はて、彼とはほとんどトラブルなど無かったが……。
「いけませんな、お分かりでないとは。嫉んでいるのですよ、イゼルローン要塞司令官兼駐留艦隊司令官、ルグランジュ提督も狙っていたのです」
「なるほど、そういう事ですか」

そういう事か、あの敗戦の後、近衛部隊である第一艦隊の司令官職と最前線のイゼルローン要塞司令官兼駐留艦隊司令官が空席になった。そのどちらもルグランジュ提督は得ることが出来なかった。その事を面白く無い、そう思っている。まして俺はあの遠征では三割以上の損害を出した。敗軍の将を何故最前線に、そんな思いも有るだろう。

どうりでルグランジュ提督がそそくさと消えたはずだ、一番顔を見たくない二人が居たのだから……。溜息を吐くとカールセン提督がまた笑った。
「まあ彼は今度の任務で成果を上げて上層部や政治家達にアピールしたい、そう思っているでしょうな」
「そう上手く行きますか、作戦は既に打ち合わせ済みと聞きましたが?」
私が問い掛けるとカールセン提督は苦笑を浮かべた。

「まあそれぞれ別個に動こう、そういう事です」
「別個? 協力はしないという事ですか?」
「そういう事ですな」
ルグランジュ提督は一体何を考えているのか……。

「それほど悪い考えではないでしょう。今回の出兵、目的は帝国の混乱の助長です。別々に動いて帝国領内を荒らし回った方が効率が良い。そう考えることも出来る」
「まあ、そういう考えも有りますか」
「ええ、そういう考えも有ります」
やれやれだ、気が付けば溜息が出ていた。そしてカールセン提督がまた笑い声を上げた。







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