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銀河英雄伝説〜悪夢編
第三十六話 来たよ、来た来た、ようやく来た
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シトレ元帥の副官でもあった俺は左遷される事も無く宇宙艦隊司令部に参謀として招き入れられ補給問題に取り組んでいる。

「幸い食料は前回の遠征で使わなかった分が有る。そいつが使えるからな、必要なのは兵器とエネルギーだ」
「では多少は楽ですか」
「遠征軍の規模も小さいしな、楽と言えば楽だ。だが小さいと言っても二個艦隊、三百万近い人間を喰わせねばならん」
「大変ですね」
お前が溜息を吐くな。溜息を吐きたいのは俺の方だ。

「それにしても捕虜交換は反故か……」
「マスコミが煩いですからね。同盟市民の間でも捕虜交換については本当に行われるのかと疑問の声が上がっています」
「そうだな」

「実際捕虜交換は同盟側にメリットが多いでしょう。疑問の声が出るのは当然とも言えます」
その通りだ、俺も頷いた。同盟軍は前回の遠征における損害で圧倒的に将兵が不足している。そして早期回復を図ろうにも新兵の徴集だけでは数は揃えても錬度の低下は避けられない。捕虜が戻ってくればその効果は大きい。

当初帝国と同盟は内乱終結後に捕虜交換を行う事で合意していた。昨年の帝国領侵攻作戦で大きな損害を受けた同盟としては願ったり叶ったりだった。帝国が内乱で混乱する間、同盟は国力回復に努める。そして内乱終結後は捕虜交換で将兵を補充する……。だが実際に帝国内部で内乱が発生すると同盟市民の間から出兵論が出始めた。

“焦土戦術を使う様な敵が捕虜交換などするだろうか、民衆を飢餓に追い込むような帝国が捕虜を気にかける事等有り得るはずもない。捕虜交換は時間稼ぎだ。ここは出兵して帝国の混乱を助長すべき、それこそが同盟の国力回復に役立つだろう”

出兵を求める声は日に日に強まり政府はそれに押し切られる形で出兵を決めている。動員兵力は二個艦隊、第一、第十一艦隊が帝国領へ攻め込む。
「しかし俺はどうかと思うな、一度約束しておきながら反故にするというのは」
「私もどうかと思いますよ、例え帝国相手の約束でも守るべきだと思います」
ヤンが肩を竦めて息を吐いた。

「ヴァレンシュタイン元帥はどう思うかな?」
エーリッヒ・ヴァレンシュタイン元帥、帝国初の平民出身の元帥、そして宇宙艦隊司令長官……。焦土作戦を実施する様な男だ、まだ若いが勝つためには手段を選ばない、冷酷な男なのだろう。だが実力は本物だ、彼も彼が率いる宇宙艦隊も。だから平民でも元帥、宇宙艦隊司令長官に就任した。

「さあ、面白くは無いでしょう。ただ辺境星域はメルカッツ上級大将が担当する様です。直接彼と戦う事は無いと思います」
「せめてもの救いだな」
「まあ油断は出来ませんが……」
ヤンは憂欝そうな表情をしている。油断は出来ないか……。

「内乱終結後が怖いですね、当然ですが彼は報復に出るはずです。それがどんなもの
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