拠点フェイズ 3
拠点フェイズ 劉備 (桃色) 「我愛?」
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」
「きゃっ! び、びっくりしたよー」
「ぐずっ……すまん、桃香。誰か噂している……か?」
急に鼻がムズムズした。
確かに肌寒くなってきた季節ではあるが……
今は平時なので、AMスーツを着ていないから体温調節がされていない。
どうにもこの時代の服は、麻や木綿で出来ているから通気性がいいけど、保温性がない。
絹みたいな上等なものも献上されているんだが……基本女性ものばかりだ。
まあ、服屋で絹の服を仕立てるかな。
幸い、資金的にも余裕があるし……
「で、どこにいくんだ?」
俺は桃香に問いかける。
今日は、桃香が漢中を案内したいというから付き添っている。
先日、朱里に指示した案内図のこともあるし、漢中全体を把握しておいたほうが、都合がいいだろう。
「えっとね? 愛紗ちゃんがいつもお世話になっている服屋さんがあるの。そこで、ご主人様に服を選んでもらおうかなって」
「は? 見廻りじゃないの?」
「え? うん、も、もちろん、見廻りでもあるよ? あるけど……ダメ?」
「いや、別にダメという訳じゃないけど……ちょうど俺も服欲しいと思っていたし」
「ほんと!? やった! じゃあいこ!」
桃香が満面の笑みとなって、俺の手を取り、引っ張る。
「お、おい、桃香! そんなに慌てなくても……」
「いいからいいから! さあ、早く!」
俺は手を引っ張られながら、どこか楽しげな桃香の姿に思わず見惚れる。
考えてみれば桃香も年頃の女の子……しかも、美少女だ。
こんな子に慕われているなんて、男冥利に尽きるというもの。
(元の世界……向こうより殺伐とした世界なのに、桃香たちのアイデンティティーが現代の女性とあまり変わらない……やっぱり一刀が作った世界は、何処かおかしいよな)
その事実に、思わず苦笑してしまう。
考えてみれば、おかしな世界なのだ、ここは。
(生と死が隣り合わせなのに、およそ生き死にと無縁の……そう、日本のような雰囲気がある世界。この世界の住人の違和感……生に対する必死さが感じられないんだ)
戦となれば人が死ぬ。
剣を携えていれば、いつでも誰かを殺せる。
そんな世界であるにも拘らず、だ。
無論、俺だってその違和感が悪いことだとは思わない。
ただ、やはりその違和感を感じずにはいられない。
(……ああ、そうか。だから俺は、あんなに必死になっていたのか……)
不意に思い至る。
俺が宛で、何ヶ月も自室に篭って指示書を書いたのは。
現代の日本のような……民が武器を持たずに済むような、平和に暮らせる場所を作りたかったんだ。
(……一刀のこと笑えないな、こりゃ)
とんだ甘ちゃん思考だったって
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