01
[8]前話
血塗られた剣があった。
引き抜かれれば止まることを知らず、戦場に鮮血の花を咲かせてまわる。そして咲いた花はその剣に飲み込まれて消える。
《惨殺剣》。それがその血塗られた剣の名前。
何人もの剣士たちが、その剣を制御しようとして失敗し、自らの血を吸われてきた。
最初の一人は剣の力を解き放ち、その力を制御できずに喰われた。
二人目は剣の力におぼれ、意識を奪われたのちに、攻略組の剣士たちによって処刑された。
三人目の剣士はなんの力も持たない少年。知らないうちに食い尽くされて、本人も気付かぬままに死んだ。
四人目の使い手は剣に認められ、剣に適合したがついぞその力を発揮することなく死に至った。
五人目の使い手も力におぼれ、最高峰の剣士たちによって処刑された。
そうして何代も何代も繰り返すうちに、いつしか、使い手たちは《処刑》ではなく《討伐》されるようになった。
使い手が現れたら、使い手自身の意識には関係なくそいつを殺す。惨殺の剣が目覚め、さらなる犠牲が出る前に。
多数を救うために小数を斬る。それがいつしかその世界の――――世界最初のVRMMO、デスゲーム《ソードアート・オンライン》の条理になった。
それは《最初の剣士》が《惨殺剣》を抜いて止めようとした、世界の悪夢であった。
*
アインクラッドの第一層には、監獄エリアというところがある。犯罪を犯したプレイヤーが、《黒鉄宮》を取り仕切る《軍》につかまると、大抵ここに収容されるのだ。
当然、人殺しなどの重罪を犯したプレイヤーは奥のエリアに収容される。
そして、その最奥部に、現在史上最悪のプレイヤーが封印されている。
黒い髪に、ぎらぎらと光る赤い眼。
彼の名前はアース。オレンジ化した理由は大量虐殺。惨殺人数二百人。アインクラッドでPKされたプレイヤーの内五割近くが彼の手にかかった存在だ。
彼はある日、全てを失った。だから、代わりにすべてを破壊することにしたのだ。
少年は切望する。世界の終焉を。
法則性の破滅を。
かつて、《その剣》を手に取ったものの内の多くが願ったように。
かくして、《その剣》は少年の元へと降臨する。
『――――汝、我の力を求めるか。この世の破壊を望むものか。すべての秩序を破滅させんと欲する者か』
少年の答えは決まっている。
「当然だ。俺はお前が来るのを待っていた」
「――――――――――――《惨殺剣》」
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