暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
鈴の音
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魂なき身体を、数秒しげしげと眺めてからシバは卓上に置いた《幻鈴》を一度だけ振るった。
────リイイィィィィーンンン────
涼やかで透明な音色が響き渡り、卓上に白い陶器のティーカップが現れる。
それを持ち上げ、中になみなみと満たされている淡い水色の紅茶を一口すする。口の中に広がる爽やかなハッカの味とともに、シバはその謎の紅茶を飲み下す。
次いで、首を巡らす。
その視線の先にあるのは、リビングに隣接する部屋へのドアだ。
きっちり閉じているそこに、半ば独り言のようにシバは、《
幾何学存在
(
ジオメトリー
)
》は口を開く。
「本当に会わなくても良かったのか?弟なんだろう」
その言葉が宙空に溶け去ると同時、扉が音もなく開いた。
その中から出てくるのは、ツヤのない黒髪に漆黒の瞳を持った少年だ。
いや、青年と呼んでいいかもしれない。幼さが中途半端に残っているので、ぱっと見の年齢が分かり難いのだ。
しかし、彼の周囲を取り巻く空気は異質だった。いや、異質そのものと言っていいのかもしれない。
だが、そんなもので彼のオーラが薄れているかと問われれば、全然全くそんなことはなかった。むしろ、増していて、増長しているような感じ。
それを包み込んでいる彼の服装は、黒い長めのロングコートという、まぁこの世界ではそんなに珍しい物ではない物だった。
強いて言えば、裾が長いのとポケットの位置でそれが白衣に見えるということだろうか。その色は白ではなく、黒なのだけれど。
彼は言う。
異質そのものの男は言う。
どこか退屈そうに、言う。
「別に。血の繋がりなんて、そんなに大事な物じゃあない。それに、ここで俺があいつに会うのは《運命》にのっとったことじゃないしな」
そう言って、男は向かいに座った。
その際にレンの体が椅子からずり落ちて、結構派手な音とともに床に落下したが、男は全くもって顔色を変えなかった。
それに、シバはもう一度だけハンドベルを振るう。涼やかな音が部屋の隅まで届く前に、卓上にはもう一つの白いティーカップが出現していた。
その中には、むしろ毒々しいを通り越して冗談と言える真っ黒な泥水のような紅茶が入っていた。
「飲む?」
「…………悪意しか伝わってこないんだが」
そう言っても、ズゾゾッと男は飲む。飲んでくれる。
そんな彼にシバは────
桑原
(
くわばら
)
史羽
(
あやは
)
はぽつりと、無表情に呟く。
「全てお前の想定内、というものなのか。相馬」
それに彼は答える。
いつものように。
「さて、ね」
《鬼才》小日向相馬は応えた。
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