第二部 文化祭
第38話*君の為
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「はいキリト、約束通り作ってきたわよ!」
アインクラッド高等部屋上。
リズベットはよく出来たショートケーキを目の前のテーブルに置いた。
「美味しそうでしょ?」
「うん、意外だった」
「あんたが思ってるよか、あたしの女子力はお高いのよん」
得意気に言い、フォークを俺に渡してきた。俺はそれをありがたく受け取る。
「……ね、キリト」
「ん?」
「……これ、ショートケーキって言えるのかしら」
ケーキを指差して訊いてきたので、思わず首を傾げながら答える。
「どう見てもショートケーキだと思いますが」
「ケーキの大きさ見なさいよ」
リズベットの作ったケーキは、通常ケーキ屋などで売っているものよりやや大きめだ。
「……こんな大きいケーキ、ショートって言えるのかしら」
リズベットが溜め息混じりに言う。
「リズ、ショートの意味の解釈を間違えてるぞ」
前に聞いたことがある。あれは、ある少女に、リズベットと同じように超高級ケーキを奢った時のことだったか。
少女は言っていた。
──知らないの? ショートケーキのショートは?短い?って意味じゃないのよ。
──もともとは、ショートニングを使ってショートな、つまりサクサクな歯触りを出したケーキ、っていう意味。アメリカだと、土台にサクサクしたビスケットを使ってたみたいね。
「でも、日本式は柔らかいスポンジを使うから、本当の意味は失われちゃってるんだけど……」
「……どうしたのキリト、いきなり?」
どうやら俺は、口に出してしまっていたらしい。
俺にショートの意味を説明したあの少女は、その直後にっこりと微笑んでいた。
──その笑顔は、未だに忘れることができない。
「……なんでもないさ。えっと、ショートの意味についてだけど……」
俺は少女と全く同じ説明をした。
きき終えたリズベットは、驚きの表情を見せ、もうひとつ訊いてきた。
「それ、誰かが言ってたの?」
俺は言葉を詰まらせた。
その?誰か?──少女は、つい数日前まで俺の一番近くにいた。
出会ったばかりの頃、仲はあまりよくなかった。少女はいつもはりつめた空気を纏っていて、いつも無表情で、それでいていつも悲しそうだった。
俺は最初、その少女のことを苦手に思っていた。
しかし、共に依頼された仕事をこなしたり、やがてクラスメートとして一緒にいる時間が長くなっていくにつれて、少女は色んな、本当に色んな表情、仕草を見せるようになった。俺も、少女を苦手と思うことはなくなっていった。
休み時間にはお弁当を作ってきてくれたり、規則にうるさかったり、買ってあげた人形で子供のように大喜びしたり。
成績優秀で、細剣術においてはは学園トップで
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