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久遠の神話
第五十三話 十一人目の影その五
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「他のお家でもそうして回ってた人なのよ」
「何か凄い親戚の人がいたのね」
「そんなのだから奥さんにも逃げられてそういうことをする様になって」
「その人今もこの家に来てるの?」
「あっ、もう来てないから」
 ここで樹里の顔が明るくなった。
「二度と来ないかもね」
「行方不明になったとか?」
「あまりにも酷いから一族で問題になってお寺に入れたけれど」
 そこで修行して性根を叩きなおそうとしたのだ。ここまではある話だ。
「けれどそこでお寺の悪口ばかり言って」
「お寺の世話になってるのに?」
「住職さんになる人がどうとかその宗派が世襲になってるとか」
「お門違いのこと言ってたんだ」
「教えがわからないとか」
「勉強すればいいんじゃないかな」
「努力しない人だったから」
 こうした人物の常としてこの輩もそうだったというのだ。
「本をちょっと読んだだけで偉そうに言ってたのよ」
「そんな人だったらお寺に入っても無駄っぽいね」
「実際にそれでもよくならなくてあまりにもお寺の悪口、しかも的外れなことばかり言うから」
「お寺にもいられなくなったんだ」
「自分で出て行って後は」
「今その人どうしてるの?」
「どうしてるかしらね」
 樹里も首を捻って言うことだった。
「果たしてね」
「死んだとか?」
「そうじゃないかしら」
 親戚に対してではなく明らかに他人について言う言葉だった。
「暫く家に無言の電話、多分うちに誰かいるのか確認の電話が来たけれどね」
「それもなくなったんだ」
「そうなの。だからね」
「もうその人も死んだんだ」
「こう言ったら何だけれど野垂れ死んだんじゃないかしら」
「悲しい結末だね」
「だってね。本当に酷過ぎたから」
 樹里は顔を曇らせてこう上城に話した。
「図々しいにも程があって」
「どうしてそんな人になったか不思議だけれど」
「その人の母親、もうこの人も死んだけれど」
 元凶は親だった、悪い親からは悪い子供ができるというのは教育の結果であろう、質の悪い人間が行うことは悪いことでしかない。
「この人が滅茶苦茶甘やかしたのよ」
「その甘やかし方が酷かったんだね」
「もうべたべたした感じで」
「ううん、甘やかし方もあるっていうけれど」
「多分最悪の甘やかし方だったわ」
 上城も樹里もまだよくわかっていないが甘やかし方もそれぞれだ、中には悪い甘やかし方もあるのだ。そういうことだ。
「自分の叔父さん、脳梗塞で倒れてから身体の動きが悪くなった人に注意されて殴ってやろうか、って言ったことも何でもない様に言ってたし」
「いや、それおかしいよ」
 上城も樹里の今の言葉には唖然となった。
「自分の叔父さん、しかも障害者の人に注意されて殴ってやろうかって言ったら」
「普通の人は
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