第二十二章
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第二十二章
そのうえでだ。澄んだ呻き声が聞こえてきたのだった。
「うう・・・・・・」
「やはりな」
役はその呻き声を聞いて言った。
「思った通りだったな」
「わかったというのね」
「そうだ、わかっていた」
そうだと返すのだった。
「既にだ」
「既になのね」
「貴様には結界がある」
最初の戦いでのそれのことだ。銀の銃弾や手裏剣を全て弾いたそれをだ。
「そしてそれを壊すことはできはしない」
「それもわかったのね」
「しかしだ。ハープを鳴らし霧を出し全てを消す時にはだ」
「そうよ」
美女の方から認めてきた言葉だった。
「その通りよ。それは消えるわ」
「その通りだな。力をそこに集中させる為だ」
「全てわかっていたのね」
「言ったな。戦いに勝つにはだ」
役はまたこのことを話すのだった。
「相手を知ることだ」
「私をということね」
「その通りだ。貴様のことはわかった」
役は断言さえしてみせた。
「糸は身体の一部で結界は霧を出す時に消える」
「全てが」
「そして貴様は霧を出す時ハープを鳴らす」
そのアイリッシュハープをである。
「そこから離れることはできない」
「それを全てわかってのことだったのね」
「わかっていなければ死んでいた」
これは断言だった。
「貴様ではなく私達がだ」
「貴方達がね」
「しかしわかった。だから勝った」
「そういうことね」
「わかったな。それではだ」
ここまで言ってだ。美女に告げた言葉だ。
「さらばだ」
「そうね。私はもうね」
霧は今も晴れてきていた。美女は胸から血を流していた。そこには手裏剣も刺さっている。言うまでもなく本郷の手裏剣である。
「終わりだから」
「そうだ。ではな」
「死ぬ時は静かに去るもの」
美女の姿が透けてきていた。そうして。
「さようなら」
最後にこう言って消えるのだった。後に残ったのはそのハープだけだった。
本郷はそのハープを見ながらだ。静かに言うのだった。
「これですけれど」
「ハープが」
「どうなんですかね、これ」
ハープの方に歩み寄りながら役に問うのだった。
「あの妖精の本体なんですかね」
「そうだろうな。それがな」
「じゃあこいつも」
「いえ、待って下さい」
しかしここでアンジェレッタが言ってきた。
「それは」
「あれっ、何か用件が」
「あります」
こう本郷に言うのだった。
「ですから」
「というと何が」
「これはこちらで保管させてもらいますか」
「そのハープを?」
「ある筋からの要望でして」
微笑んでの言葉であった。
「ですから」
「ああ、あそこですね」
本郷は彼女の言葉を聞いてだ。その『ある筋』というのが何処なのかすぐにわかったの
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