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ハーブ
第二十一章

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第二十一章

 その蝶達を周りに舞わせながら。彼女はまた言ってきた。
「これは私の僕達よ」
「死の蝶だというのね」
「ええ」
 アンジェレッタの問いに微笑んで述べた。
「そういうことよ」
「触れれば死ぬ」
 アンジェレッタはまた言った。
「そういう類ね」
「察しがいいわね。そうよ」
 まさにその通りだというのだ。
「この蝶達は幾ら攻撃しても私は傷つかない」
「僕だからね」
「さあ、僕達よ」
 悠然としてその蝶達に告げていた。
「死の世界に誘うのよ」
 その言葉と共にハープを奏でる。そうして全てを霧で覆ってしまった。その中に消えた美女と蝶達を見てだ。まずは本郷が言うのだった。
「向こうにとっちゃ切り札ですかね」
「そうだな」
 役も彼のその言葉に応える。
「まさにそれだ」
「つまりピンチってことですね」
「いや」
 しかしであった。ここで彼は言うのだった。
「そうではない」
「といいますと?」
「ハープの音は聴こえるな」
 今言ったのは音のことだった。
「それはだ。聴こえるな」
「ええ、よく」
 はっきりと答えた本郷だった。
「聴こえますよ。今でも」
「その通りですね」
 そしてそれはアンジェレッタも同じであった。
「実によく聴こえます」
「そしてそこに何かがあるんですね」
 本郷はあらためて役に問うた。
「こうしている間にも蝶達が迫りますけれど」
「あの蝶達だが」
 ここで役はさらに言ってみせた。
「その身に触れるだけでなく燐粉に僅かに触れてもだ」
「やばいっていうんですね」
「そうだ」
 このことも話すのだった。
「だからだ。気をつけることだ」
「そうですか。じゃあ結界も」
「通じない」
 それも駄目だというのだ。
「だからだ。生き残りたければだ」
「あいつを倒す」
 本郷の言葉が強いものになった。
「そういうことですね」
「そしてハープだ」
 ここでまたハープのことを話しに出す役だった。
「その音がする方にだ」
「ええ、そちらに」
「手裏剣を投げるのだ」
「手裏剣をですか」
「私も仕掛ける」
 彼もまた銃を構えていた。
「そしてアンジェレッタさんも」
「はい」
「御願いします」
 こう彼女にも声をかけた。そうしてであった。
 本郷は手裏剣を、役は銃弾を、そしてアンジェレッタは光をそれぞれ出してそのハープの音がする方向に放ったのだった。三つの攻撃がそれぞれ向かう。
 そしてそれが炸裂するとだった。ハープの音色が止まった。

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