暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜悪夢編
第三十五話 負けたら死ぬ、勝ったら……
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話



帝国暦 488年 5月 10日  帝国軍総旗艦  ブリュンヒルト  ジークフリード・キルヒアイス



帝国軍はゆっくりとシャンタウ星域に向かっている。レンテンベルク要塞を落とした後、帝国軍はフレイア星域に進攻し貴族連合軍に参加した貴族領を攻略した。これから向かうシャンタウ星域を攻略した後は一隊を以てトラーバッハ星域を攻略、本隊はリッテンハイム星域に向かう事になっている。現時点ではガイエスブルク要塞から貴族連合軍が出撃してくる様子はない。

辺境ではようやくメルカッツ提督が攻略に取り掛かるようだ。六個艦隊を擁してはいるが攻略そのものには三カ月から四カ月ほどかかるだろうと総司令部では想定している。もっとも自由惑星同盟を名乗る反乱軍が辺境星域に押し寄せてくれば辺境星域の攻略だけでなく貴族連合軍の鎮定そのものに影響が出るはずだ。

そうなった時、司令長官は一体どうするつもりなのか……。司令長官に視線を向けた。司令長官は指揮官席にゆったりと座って足を擦っている。例の襲撃事件で怪我をした箇所だろう。時々同じ行為を見る事が有る、まだまだ具合は良く無いようだ。歩く速度も決して早くはない。右の足首から先が義足だと聞いているがそれを見た事の有る者はごく一部の人間だけの様だ。総司令部では副官のフィッツシモンズ大佐ぐらいだろう。

……アンネローゼ様が司令長官に下賜された。不当としか思えない、アンネローゼ様には責められる咎は何もなかった。ベーネミュンデ侯爵夫人、あの女の愚かな執着とフリードリヒ四世の優柔不断があの事件を起こしたのだ。皇帝の寵を失った寵姫などそれまでに貰った領地に逼塞するのが当然なのにそれを放置するから……。

その事があの事故とイゼルローン要塞の陥落に繋がった。そして貴族達は皆がアンネローゼ様を責めた。ベーネミュンデ侯爵夫人は死に皇帝フリードリヒ四世は責められない、だからアンネローゼ様を責めた。アンネローゼ様を責める事で暗にフリードリヒ四世を責めた。

だからアンネローゼ様は司令長官に下賜された、平民である司令長官に。貴族達には皇帝から自分の代わりにアンネローゼ様を罰したのだというメッセージだった。そして司令長官には自分の身代わりとして差し出したのだ。悪いのはこの女で罪はこの女に有る、償いをさせると……。

不当だと思う、司令長官は断るべきだった。一度下賜するという話を出した、それだけで十分だったはずだ。後は寵を失ったとして宮中を下がらせれば良い。皇帝の寵を失った寵姫、罰としては十分な筈だ。それなのに司令長官はそれを受け入れあまつさえ爵位と領地の返上をさせた。

アンネローゼ様は爵位や領地に拘る方ではない。だから不当とは思っていらっしゃらないがどう見ても不当だ。司令長官は何故そこまで貴族達に阿ってアンネローゼ様を貶め
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ