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銀河英雄伝説〜悪夢編
第三十五話 負けたら死ぬ、勝ったら……
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トライト准将とアンスバッハ准将だろう」
即答だな。まあ分かっていた事ではある。

「連絡は取れるかな?」
「多分、可能だと思う。二人ともポータブルのTV電話を持ってガイエスブルクに行った筈だ。番号は知っているから連絡は取れるはずだ……」
「……」
「連絡を取りたいのか?」
フェルナーがこちらをじっと見ている。やばい仕事だと思ったかな。

「いずれ取ってもらう事になる。女の子を二人、助けたいんだ」
「女の子を二人……。なるほど、そういう事か」
「皇族が少ないからな、保護しておきたい。内乱が終結した後なら二人には力は無い。こんな事は考えたくは無いが万一の時の事も考えないと……」
フェルナーが頷いている。悪いな、フェルナー、今話せるのはここまでだ。

「皇族が少ないか……。確かにそうだな、女子供ばかりだ。有力な成人男子が皇族に居ればこんな内乱は起きなかったはずだ」
「陛下は未だ幼い、後継者は当分得られない。これ以上後継者を巡っての騒乱は沢山だよ」
「なるほど」

「こちらが優位にたった時点で、向こうの敗北が見えた時点で話をしようと思っている」
「分かった」
話しは終わった、切り上げようとした時だった。フェルナーが“ちょっと良いか”と話しかけてきた。

「この内乱が終わったら卿はどうするつもりだ?」
「終わったらか……、負けたら死ぬな」
「……勝ったら?」
「アンネローゼと子作りに励むさ」
フェルナーが唖然としている。もう少しからかってやるか。
「彼女も二十六だからな、子供は早い方が良いだろう」

フェルナーが咳払いをした。
「卿、分かっているのか? 自分が危険だという事を」
「分かっているよ、さっきのは冗談だ。しかし自由惑星同盟が有りイゼルローン要塞も向こうに奪われた。当分は私の力が必要だ」
「……」
考えているな、釘を刺しておくか。今動かれると迷惑だ。

「アントン、馬鹿な事は考えるな。私は大丈夫だ」
「……」
「適当な時期に軍を辞めて弁護士になる。リヒテンラーデ侯も安心するだろう。それが私の夢なんだ」
「……分かった」
フェルナーが部屋を出て行った。弁護士か……、所詮は夢だ、夢でしかない……。





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