第二十章
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第二十章
そして三人の目の前に霧が起こりだ。それが消えた時彼女がいた。
「こんばんは」
「ああ、こんばんは」
本郷が彼女の挨拶に応えた。
「残念だが元気そうだな」
「残念なの」
「戦えるのは嬉しいがな」
こうも言うがであった。
「敵が元気で素直に喜ぶ様な人間じゃないんでな」
「了見が狭いとでもいうのかしら」
「そこまでお人よしじゃないってことさ」
そうだというのである。
「生憎な」
「そうなの」
「そうさ、それじゃあな」
「早速はじめようかしら」
「容赦はしない」
本郷は刀を抜いてきた。それを中段に構える。
役も拳銃を出しアンジェレッタも水晶を出していた。既に戦闘態勢であった。
「ここで決着をつける」
「覚悟はいいわね」
「望むところよ」
お互いに言葉を交えさせてであった。遂に最後の戦いの幕が開けた。
まずは美女が糸を出してきた。それがそれぞれ上下左右から三人を襲う。
「おいおい、今度は立体かよ」
本郷がその糸が迫るのを見ながら言う。
「まるで蜘蛛の糸だな」
「本郷君」
しかしここで役は言うのだった。
「斬るといい」
「斬るんですか」
「そうだ、斬るのだ」
そうしろというのである。
「糸をだ」
「わかりました。それじゃあ」
「それでは私も」
アンジェレッタも言うのだった。
「この糸を」
「そうして下さい、ここは」
役も銃を左手に持ち替えてそのうえで右手に燃え盛る炎の剣を出した。そうしてであった。
その糸を三人共断ち切る。アンジェレッタは水晶球から光を出しそれで焼き切っていた。
するとだった。不意に美女が辛い顔をして呟くのだった。
「くっ・・・・・・」
「わかっていた」
役は彼女が苦しむのを見て述べた。
「貴様のことはだ」
「わかっていた?何を」
「貴様の糸は貴様の身体の一部だ」
そうだというのである。
「だからだ。こうして斬られればだ」
「それをどうして」
「先の戦いにおいてだ」
あのアパートの一室での戦いの時を語るのであった。
「本郷君に糸を斬られてそれで苦悶の声をあげていたな」
「それに気付いたというのね」
「戦いは何によって決まるか」
役はこのことを話してきた。
「それはだ」
「何だというのかしら」
「敵の弱点を見抜くことだ」
それだというのである。
「それによって勝つものだ」
「確かにね」
美女もそれは否定しなかった。
「その通りよ。ただ」
「ただ。何だ?」
「私は糸だけではないのよ」
こう言って微笑みを取り戻してきた。そうしてであった。
その周りに何かを出してきた。それは。
黒い無数の蝶達だった。それが夜の世界の中に出て来たのである。
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