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戦国異伝
第百三十九話 千草越その九
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「よいな」
「わかりました」 
 家臣達は信長の言葉に応えた、そのうえで。
 すぐに家康のいる浜松に使者が送られた、だが既にこの日がすぐに来ることを察していた家康は既に用意を整えていた。
 それでだ、家康は信長からの早馬の使者が来るとすぐ諸将に告げた。
「出るぞ」
「はい、では」
「今より」
「すぐに尾張から美濃に入りじゃ」
 そしてだというのだ。
「岐阜で織田殿の兵と合流してじゃ」
「近江ですな」
「そこを目指しますな」
「雪辱を晴らそうぞ」
 こう己の家臣達に言うのである。
「是非な」
「そうですな、無念の退きでしたし」
「次こそは」
「おそらく浅井殿は織田殿に向かわれますな」
 ここで言ったのは本多正信だった、彼は一本気な武辺者の多い三河武士達の中では数少ない軍師である。
 その彼がだ、こう言ったのだ。
「それしかないが故に」
「信長殿の御首を取るしかか」
「はい、浅井殿は必ず織田家の軍勢に向かわれます」
 このことは間違いないというのだ。
 そしてだ、もう一つ間違いないことはというと。
「そして我等はといいますと」
「朝倉殿じゃな」
「はい、あの方との戦になります」
 浅井と朝倉が出て浅井が織田に向かうならばだ、徳川家と戦うのは朝倉家の他にはいなかった。
 そしてだ、その朝倉家はというと。
「その数二万です」
「そうじゃな」
「それに対して我等は一万です」
 後の数千は守りとして三河と遠江に残す、それで一万である。
「二倍の兵との戦になります」
「二倍か」
「浅井家はおそらく十万の織田家と向かいますが」
 それに対してだ、徳川家はだ。
「二倍です」
「浅井殿辛くはないがな」
「浅井殿のことは置いておきまして」
 今は敵だ、それで本多は今はこれで終わらせたのだ。
 そしてその朝倉の二万の軍勢、彼等はというと。
「宗滴殿が出陣されるかどうかはわかりませぬが」
「若し出陣されればか」
「かなり厄介かと」
「そうじゃな、あの方は天下の名将じゃ」
「二倍の兵を率いる天下の名将と戦わねばなりません」
 若し宗滴が出陣して来ればだというのだ、その時はだ。
「苦戦は免れません」
「そうじゃな、しかしじゃ」
「それでもですな」
「戦い、そして勝つしかない」
 宗滴が相手でもだというのだ、戦うからにはだ。
「そうするしかな」
「ですな、では」
「臆することはない、例え相手が宗滴殿だとしてもな」
「我等は勝つだけですか」
「皆の者、よいな」
 家康はあらためて己の忠実かつ有能な家臣達に告げた、常に己には過ぎたる者達だと考えている。
 その彼等にだ、こう告げたのである。
「次の戦でこそ三河武士の意地を見せてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「戦うので
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