八話 「補殺」
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燻製である。一度やってみたかったのだ。
持ってきたり拾ったりした木くずやチップ。それに火をつける。そして火が周囲に移らないよう、その周りを岩で囲む。勿論、作るのは周辺の木から離れた川の近くだ。
見つけて持ってきた、適当な大きさの金属の覆い。それに穴をあけ、棒を通す。その棒に紐で縛った肉を半分ほど吊るす。
それを煙に当たる様に岩に乗っける。
終わり。
「あれ、何か無理じゃね?」
出来上がったそれの、余りのチャチさに不安しかない。
どうしてか成功する気が一切しない。
「白はどう思う?」
「僕は良く知らないので分かりません。これって、火は消えたりしないんですか?」
「一応風の通り道は作った。白い煙も出て炎は出てないし、大丈夫だとは思う」
煙もそこまで大きい物じゃない。遠くから見て気づかれたりはしないだろう。
だが、何か忘れているような気がしてならない。
まあ、いいか。
そう思い、残りの肉を袋に包みカバンにしまう。
「これは明日取りに来よう。今日はもう帰るぞ。出した物片付けるぞ」
「了解です」
白が散らばった物をカバンに入れていく。
その間に俺は、解体に使った苦無を川で洗っていく。
(ナイフ使えばよかったな……)
まあ今更かと思って洗っていく。
だが、中々綺麗にならない。
血は落ちたのだが、脂が落ちないのだ。
ヌルヌルとしたそれが落ちず、光に鈍く輝き続ける。
「洗剤、持って来てないな」
もっとも、洗剤をそのまま流すのもアレだが。
力を込めて洗っても、ウサギの脂が取れない。
仕方がないので、家に帰ってから取ろうと諦め、苦無を仕舞う。
白の方も荷物を仕舞い終った様だ。
「じゃ、帰るぞ」
そう告げ、その場から去って行く。
今日はロクに何もしなかったので、俺は水風船、白はゴムボールを手に持つ。
それぞれ歩きながら手で修行を続け去って行った。
暫く歩き、少し離れた場所で止まり俺は振り返った。白も、それに続き振り返る。
視界の中、白い煙が僅かに見える。
この距離で煙がかろうじて見えるレベルだ。気づかれることはないだろう。
そう理解しながら、暫くの間俺は煙を見続けていた。
横で何かが破裂するような音が聞こえ、煙の様に風で俺の髪が小さく揺れた。
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