第十一章
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第十一章
「見せてもらう」
「行くわよ」
その言葉と共にであった。ハープを奏でてきた。するとであった。
不意に部屋の中が霧に包まれた。白いその霧が部屋の中に満ちた。そしてその中にありとあらゆるものが隠れてしまったのである。
「消えた!?」
「いえ、隠れたのね」
本郷に対してアンジェレッタが言ってきた。彼等もお互いの姿が見えなくなってしまっている。
「そうなのね。こうして姿を見えなくして」
「仕掛けて来るってわけかよ」
「その通りよ」
美女の声だけがしてきた。
「それでわかったわね」
「話はな」
本郷はその声に応えて述べた。
「わかってやるぜ」
「そう、わかってくれたらいいわ」
「それで死ねっていうんだな」
「命は貰うわ」
霧の中での声だった。
「それはね」
「嫌だっていったらどうするんだ?」
ここでは軽い言葉を出す本郷だった。
「その場合は」
「簡単よ。断ることは認めないわ」
すると美女の返答はこれであった。
「それはね」
「ほお、随分と強権的だなそりゃ」
「私は人間ではないのよ」
その本郷の今の言葉に対する返答はこれだった。
「それも当然よ」
「やっぱり強気だな。何はともあれだ」
「戦うのね」
「交渉できる状況ではない」
役が述べた。
「もっとも最初からそれは考えていなかった」
「わかっていたのね」
「その通りだ。それではだ」
「来るのね」
「仕事だ。やらせてもらう」
「そういうことね。それにしても」
今言ったのはアンジェレッタだった。
「これはかなりね」
「深い霧だな、全くな」
本郷はたまりかねた口調をあえて出してみせた。
「何もかもが見えなくなってきたな」
「そうよ。何もかもね」
そしてそれと共にであった。来たのだ。
糸であった。あの糸が来た。三人がそれに気付いたのはすんでのところだった。
危ういところでかわすことができた。まさに紙一重だった。本郷は身体を左に捻ってそのうえでかわしたのだ。
「危ないところだったぜ」
「かわしたのね。見えないのに」
「見えはしないさ」
それは彼も認めたのだった。
「しかしな」
「しかし?」
「気配は感じたからな」
「それでかわせたっていうのね」
「そうさ。かわせたんだよ」
まさにそうだという。何とかだった。
「危ないところだったけれどな」
「そうね。糸が少なければね」
美女の声は相変わらず霧の中から聞こえているだけだった。
「かわせるわね。けれど」
「多ければか」
「そしてよ」
声だけが聞こえてくる。だがその声には明らかに殺意がこもっていた。その殺意を楽しんでいる声でそのうえで三人に対して言ってきているのだった。
「こうすれば」
「来たか」
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