第二部 文化祭
第37話*新たな想い
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俺は、本当に子供だな。
甘酒なんかで酔うわけないし、なによりアスナが泣きながら違う、違うと否定していた。なのに、俺は。
「バカだよな……」
「ええ、ほんっとバカね」
声のした方を振り返ると、リズベットが仁王立ちしていた。
「リズ……お前まさか、さっきの見」
「なくてもわかるって言ってんでしょ? あんた達って、ほんとにわかりやすいんだから」
リズベットが溜め息混じりに言う。
「せっかくこのあたしが背中を押してあげったっていうのに、あんたほんと……なにしてんのよ」
「……」
ほんと、なにをしているんだろう。
「……アスナのこと、忘れたいの?」
「……」
「じゃあさ」
リズベットが俺の前に回り込む。そして言った。
「あたしと付き合ってみる?」
一瞬、思考回路がフリーズする。
「つ、付き合うって、どこに」
「違うわよ。あたしと交際してみないかって訊いてるの……ああもう、言わせないでよ恥ずかしい!」
リズベットがこちらに背を向け、自分の髪をかきむしる。そして少し振り返る。
「……一応本気、なんだけど」
上目遣いで言うリズベットは、いつもよりも女の子らしく見えた。
「……ど、どうしたのよ」
照れたように首を竦める。
「いや……リズも女の子なんだなと」
「どういう意味よ!」
少しばかり怒りっぽいところも、今どきの女の子って感じがする。
「あーあ、あたし、お腹空いちゃったわ! キリト、なんか奢ってよ」
「はあ!?」
「今財布ピンチなのよ」
「嘘つけ、リズベット武具店は大繁盛してるだろ」
当の鍛冶屋リズベット様はぷくぅっと片頬を膨らませた。
「いいからなんか奢ってよ!」
「理不尽です!」
「あたしねー、ずーっと欲しかったお高いケーキがあるのよぅ」
「今お高いって言った!? 言ったよな!? ……俺は絶対に買わないからな」
すると、リズベットが俺の手をぐいっと引っ張り、走り出した。
「ど、どこ行くんだよ」
「イミテーション・シティの有名ケーキ屋?sweet sweet?」
「奢らせる気か! あそこのケーキ超高いんだぞ! くそッ、却下だ!」
俺の言葉に、リズベットはにっこりと微笑みを浮かべて振り返った。
「いいじゃない、後であたしの手作りケーキあげるから!」
「それとこれとは」
「ふーん、キリトはあたしのケーキに高級ケーキ相当の価値はないって言うのね?」
「……それとこれとは」
「もー、ほら早く!」
*
──結局連れてこられてしまった。
「ん〜、おいひい!」
リズベット、食べながら喋るなよ。
「きりとょもてゃべう?」
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