決勝戦〜後編〜
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いを後方で見ていれば、きっとうるさい爺とよばれただろうな」
「今でも十分、うるさい爺ですが」
「酷いな、君は!」
「ほら、うるさい。さぁ、始まりますよ」
+ + +
敵が攻勢の中で、ゆっくりと陣形を変えるのをみた。
この戦いの中で唯一とれるであろうたったひとつの選択。
彼が得意とし――この停滞した戦場を打破するであろう唯一の陣形。
「鋒矢の陣形」
呟いたヤンの前で、変化しつつある陣形は彼が呟いたものと同じだ。
中央突破を狙う鋒矢の陣形。
一撃の威力は大きいが、しかし――突破できなければ大きな損害を受ける。
この時点においては、おそらく最善の方法。
「でも相手に気づかれれば意味がない」
あるいは高速の変化は目の前の戦いに集中していればチャンスはあったかもしれない。だが、ヤンは彼らが得意とする陣形を知っている。
彼らは見せすぎたのだ。
静かに呟いた言葉に、ゆっくりとコンソールを操作する。
この状態であれば、こちらの手も決まっている。
敵の進撃をいなして、包囲する。
それだけだ。
そう指示を出せば、緩やかにヤン艦隊の横陣が敵を囲うように広がっていく。
もちろん、あまり広がり過ぎては駄目だ。
あくまで敵の中央突破を受け止め、包囲する。
「今回は、残念ながら審判に苦情を言うことはできないだろう」
もっとも今のワイドボーンであったならば、悔しいとの思いはあれ、苦情をいうことはないだろうが。
+ + +
放たれた矢のように、ヤン艦隊の中央にワイドボーン艦隊の鋒矢が突き刺さった。
その勢いは並大抵の防御であれば、やすやすと破り、突破したであろう。
後の事すら考えない弾幕の大安売りだ。
だが、後先を考えないのはヤン艦隊も同様であった。
ここが天王山とばかりに、情けも容赦もない弾幕の嵐は、厚みを持たせ中央からワイドボーン艦隊に降り注いだ。
その左右から攻撃に。さらされたワイドボーン艦隊は速度を低下させる。
しかし、諦めない。
なおも、ヤン艦隊に食らいつこうと走る。
全艦隊が一丸となって駆け抜ける姿は、心を凍らせる。
既に中央の一部が、矢に食い込まれ始めていた。
「っ――全員玉砕のつもりか。相手の先頭を狙え!」
言葉とともにヤン艦隊の砲撃が、艦隊の先頭へと集中する。
一条の光が偶然を含んで、重なった。
それはテイスティア艦隊を崩壊へと導いた一撃。
一点に集中された破壊の力は、ワイドボーン艦隊を飲み込んだ。
一瞬で先頭をかき消されたワイドボーン艦隊に向けて、周囲から攻撃が続く。
打ち砕かれた艦隊は、もはや最初の力を残していない。
ゆっくりと包囲される中で、それでも最後
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