6-1話
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ぁ…」
だが、それでも仙石の中では教訓のように思い出させる記憶があった。
「部活帰りに食ったラーメンは美味かったし…鬼の顧問も時々は試合に出してくれたし…友達とは馬鹿ばっかやってて…りおんもオレの事バカにするけど、勉強教えてくれたり毎朝迎えに来てくれたな…」
平凡な日常。 退屈な学校生活。 煩わしい人間関係。
つまらないと感じていたあの日常。 色褪せて感じていたはずのそれを思い返す。
数日前にあった当たり前の生活は、この遠く離れた世界の中に居て思い出させる。
当たり前の光景がどうしてか頭の中では違って見えた。
この異常な世界は、退屈と思っていた毎日ががいかに尊いものか仙石は強く思い出した。
「おふくろの弁当、友達に見せるのが恥ずかしいくらいすげぇ凝ってて、幼稚園のガキみたいだけど………また…食いてえな、あの弁当……」
本当にシンプルな事。
捨ててしまいたかった世界は、本当は退屈ではなかった。
噛み締めば分かる日常の色なのに、今まで甘さに慣れていてそれに気付いていなかった。
どうしようもなく帰りたい。
そう思わせる郷愁感が胸に沸く。
「見るモノが変わらなくてもいい…退屈でも、懐かしいあの世界に戻って……あの生活に戻って、もう一度頑張りたい……」
だから…まだ生きていたい―――と仙石は今の気持ちを吐露した。
―――。
朝の寒さに仙石は体を震わせた。
「ふ……あ〜…よく寝た…」
体は少し冷えるが、降り注ぐ朝陽を浴びて暖かく感じる。
掛け布団もないながらも、図太い神経でそれなりに眠りを越した二日目は、前日より幾分かマシだった。
隣でまだ寝ている真理谷が響かせる歯ぎしりが目覚ましになって、二度寝をする気は起きそうにない。
「大森さん? …いねぇし」
仙石の反対側で寝ていたはずであろうCAの姿がそこにはなかった。
一人分空いたそのスペースを見て、仙石は首を傾げた。
「たくっ……どこに行っ……」
“死んでしまうしかないんですよッ―――!!”
「―――ぁっ!」
不意に眠気が覚めるような形相を思い出した。
自暴自棄で、追い詰められた人間の絶叫がまだ耳に残っている。
いずれ死ぬ、それは明日にでも…と彼女はそんな言葉を残していた。
それほどまでに絶望してしまえば彼女はどうなるか?
その正気を手放してしまえば―――どんな行動を取るだろうか?
「ま、まさか……!」
厭な想像をして、仙石の顔から血の気が引いた。
「大森さん!!」
それはダメだ!と発火したように、仙石の中の“感情”が命じるように叫
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