6-1話
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「………」
「………」
「………」
沈黙が重く尾を引く。
耳鳴りがしてしまいそうなほどの静けさは、日が落ちてもそれは続いていた。
仙石、真理谷、大森、この三人が顔を付き合わせているというのに、口だけが機能しなくなったかのように喋る事をしなかった。
気持ちは暗く、言葉が出ない。
太陽が沈んで夜が訪れても、休める場所を探しても、闇を退けるために火を焚いても、その示し合わせた沈黙は続いた。
ただ黙々と、そうするしかないように、そうする事しか何も行動を移せなかった。
息と共に気力が萎えていた。
台風一過のように、過ぎ去って落ち着ける時になっても一息付く事すらままならない。
その気力を奪うような“暴力”がそうさせた。
―――悪夢が訪れ、新たな悪夢がそれを凌駕した。
怪物が怪物を屠る。
暴力が暴力に負ける。
力がより強い力に屈する。
そんな当たり前の摂理を思い知らされた。
仙石達の瞼の裏には、たった一つの脅威は『ディアトリマ』であった。
しかしその脅威は…『サーベルタイガー』という存在によって塗り替えられる。
怪物が怪物に喰われる。
人を守るためにある人間社会という枠の中では、識る事もなかった淘汰の瞬間を見せつけられた。
弱肉強食―――全ての生物に平等にして明確な摂理。
そのルールの形を目の当たりにした三人は、沈黙するしかなかった。
「やっぱりありえない」
沈黙を破ったのは、真理谷の疑問だった。
ノートパソコンを操作して、怪訝な目で凝視しているのは、あの絶滅動物の図鑑だった。
「サーベルタイガー―――正式には“スミドロン”だが……一万年も前に絶滅したはずだ」
「またその話かよ真理谷…しょうがねえだろ、いるもんはよ……」
今更そんな事実は仙石にとっては何の慰めにもならなかった。
ただ瞼の裏に焼き付いているリアルだけが仙石が捉える世界の全てだった。 逆を言えば、それだけにしか目がいっていない。
目先の脅威にばかり囚われていて、どうにかしようという考えが頭から抜け落ちている。
同じようにショックを受けても、真理谷は冷静に物事の視野を広く捉えている。
だからこそ、そんな仙石の浅慮に苛立ちを覚えた。
「いくらバカでもいい加減理解しろ。 この事態の深刻さを…」
「そ、そんな事言ったってどうすりゃいいんだよ! 理解するったって、あんなの理解して何になるんだよ、今だってあんなの出逢ったらどうすればいいかで一杯だってのに……それよりみんなを探して合流する方が先だろ!」
「どうせ………
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