暁 〜小説投稿サイト〜
弱者の足掻き
七話 「日々の鍛練」
[8/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
分の頑張りなど無意味だと言われるようで。

 自分などと違い、全うに(ざぶざ)に会えたのなら、それこそ既に自分を超えていただろう。アカデミーにでも行けば、十二になるずっと前に卒業できてしまうだろうと確信できる。
 そして同時に理解している。この思いが、あくまでも一過性なのだと。
 従順な性格など最初から分かっていた。だが、実際に見て動揺しただけ。才能も、一度抜かされでもすれば容易く諦めがつくだろう。そもそも、自分よりも強くなることが分かっていたから連れてきたのだ。弱ければ意味が無い。
 だから今している行為は下らない、形のない悪あがきなのだ。そう理解しているからこそ、衝動のままに体を動かし続ける。
無論、本格的に自分の限界を無視し壊すつもりはない。それは何が在ろうとしてはいけないのだから。寸前で止める程度の理解はある。
自分の意志でもって最初に壊す体が、自分の物など笑えないのだから。
 
 手の痛みが治まるまで、型の練習をしようと木に向かい、軸を意識しながら蹴りを放つ。
 途端、鈍い痛みが走る。何が起きたかと、服を捲る。
 脇腹に、小さな痣が出来ていた。

「……はは」

 意識しない内に、いつの間にか小さく声が出ていた。
 俺は全身の疲労や痛みを無視し、ひたすら動かし続けた。

それから暫くし、全身が悲鳴を上げきる頃、鍛錬を止めた。





「あー、疲れた」

 町中を歩きながら一人ごちる。全身が疲れ切っている。
 少し休んだからある程度大丈夫だが、それでも体が重い。
 帰るだけならばわざわざ町を通る必要も余りないのだが、少し寄り道だ。
 疲れたので、何か甘い物が欲しいのだ。
 その考えで、白露屋に足を向ける。

「おっちゃん、何か甘い物くれ」
「何か疲れたげな顔してんなイの字。友達と遊んでたのか?」
「まあ、そんな感じです」

 そんなわけないが言う訳にもいかず、適当に誤魔化す。
 度々買いに来て、ここのおっちゃんとも数ヵ月の付き合いだ。中々にフランクな会話もする。イの字、なんて呼ばれもする。
 ちなみに子供の友人がいないわけではない。知り合いはいるし、会って気が向けば適当に話したりもする。
 もっとも精神の差から微笑ましい感じで、友人、と言っていいのか微妙だが。
 知り合いの少年や少女から共に「イツキってさ、怒らないよね」とか「大人みたいなこと言うな!」と文句言われたこともある位だ。
 まあ、それはさておき。甘い物が欲しい。

「疲れてるんで、甘いもの下さい」
「言う事が何か歳違うよなぁ。甘い物ならいくらでもあるぞ。試作品の羊羹でも食っとくかい? 安くしとくよ」
「じゃあ、それ下さい」

 饅頭は結構買うため、違う物がいい。
 代金を払い、一本貰う。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ