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弱者の足掻き
七話 「日々の鍛練」
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、どこで放てばいいのかを数で覚える。
 慣れぬ動きにバランスを崩され、使わぬ筋肉の筋肉痛を経験し、この距離の的に安定して当たるようになるまで何か月もかかるのだ。
 何日も繰り返し、繰り返すうちに自然と的に近づく。遅々とした勢い故に気づけず、気づいた時にはいつのまにか当たっている。そういう成長のはずなのだ。
 それなのに、白は後少し当たる所にまで来ている。一日で、目に見える成果を出すのだ。
 このままなら、一月もせずにほぼ全てを当ててしまうだろう。
 
 その速さが、頼もしい。その速さが、怖い。
 腰から下を使わずに投擲する。それは、大凡四本に一本の割合で外れかける位置に刺さってしまう。
 白に見せる必要があったから、確かに当てるために全身を使った。だが、使わなければこんなものなのだ。
 白に見せるために、まだ白に追いつかれないために、必死で苦無を放つ。
 すぐ後ろで手を伸ばしている天才(はく)から必死で逃げるために、恐怖から逃げるために凡人(オレ)が必死に、無心で放つ。
 放つ、放つ、放つ放つ放つ、放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ、放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放???

???ズキン

「???つっ!」

 手の痛みで我に返る。見れば、手の包帯が赤く滲んでいる。豆が潰れでもしたのだろう。
 白の成長の早さを理解してから、白を帰した後、一人で鍛錬を続けてきた。
 ある時は腕の筋肉の痛みを無視し、ひたすらに苦無を投擲し続け血豆が出来て包帯を巻いた。
 ある時はひたすらに体術の型をし、筋肉に貫くような痛みが出る寸前まで錬度を上げた。
 白が帰ってから、肉体の限界が来るまで。こうでもして酷使しないと、その成長速度に置いて行かれてしまう。そうしてやっと、まだ抜かれないで済んでいる。
 特に何もなかったが、今日の組手も何度か危ないことがあった。
 
(理由は分かってるんだよな……情けねぇ事だ)

 白が、理解できない。
 辛いはずなのに、文句ひとつ言わず付き従うその性格が分からない。
 原作を知っているから理解は出来る。だが、納得しきれないのだ。
 俺は自分が死なないためなら何でもしようと思っている。白を拾ったのも、自分の命を守るためだ。あくまでも、自分の為なのだ。
 だが、白は違う。俺に付き従う。意志の最上位が、中心が白自信ではない。
 俺が必死で守ろうとするものを、貫こうと決めたものを、投げ捨てている者が目の前にいる。
 命を守る為に必死で足掻こうとする俺には、分かっていたはずなのにそれが理解できない。
 そして同時に、その才が怖いのだ。
 たった数ヶ月で追いつこうとするその才が。追い抜きかけるその才が。努力を否定するその速さが。
まるで、自
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