七話 「日々の鍛練」
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そう思う。
自分も一端読むのを止め、寝ている相手に近づく。
その手から静かに本を取り、頭の近くに置く。そして寝ているその体に布団を掛ける。
本を読む気にはなれず、静かに布団を上下させる主を何とはなしに静かに見つめてしまう。
こうして見れば普通の、町で見る子供達と違いなんてないように見えてしまう。けれど、普段の行動や言う事何故だか大人びている様に思える。
その様が、白には酷く不思議だ。
歳から比べれば酷く不相応な精神を持つ白には何とはなしにそれが分かってしまう。その違和感を感じ取ってしまう。
けれど、だからと言って白は疑問を持たない。
今日の様に何度となく鍛錬で倒されても。道具だと言われ、何度となく苦言を言われようとも悪感情など抱きなどしない。するはずがない。
あの日、必要とされた。拾ってくれた。あの時の言葉はずっと、忘れないだろう。
ただ嬉しかった。
道具だと言われてもいい。むしろ、そんな風に扱って貰えた方が自分の在り方を間違えないで済む。
駄目だと、まだ未熟だと言われてもいい。成長を、力を期待されているのだから。
力で地に伏されるのもいい。まだ未熟なのだと思い知らされる、期待に答えたくなる。
普段は気を使ってくれる。大切にされているのが分かる。だから、答えたい。
盾になれと言われたら盾になろう。命を投げ出せと言われたら投げ出そう。
どうして親代わりの相手に隠れて鍛錬をするのかは分からない。何故忍びの鍛錬をするか、詳しい所良く知らない。必死ささえ感じそうになる。
それが何なのかは分からない。分かる必要もない。必要なら、きっといつか教えてくれるだろう。なら、無理に聞く必要なんてない。
必死になるための何かの壁に、あるかもしれない何かの為の刃の様な道具であればいい。
自分の全てを、捧げると決めたのだから。白という存在は天白イツキの一つの道具なのだから。
布団で眠るイツキを見、自然と微笑んでしまう。
疲れているのならば、このまま静かにして置こう。
(お疲れ様です)
静かに心の中でそう思いながら、白はその近くで続きを読み始める。
その中にある知識を黙々と得続けていく。
小さな寝息と、紙を捲る静かな音だけがその部屋の中で続き、夜は更けていった。
この日から三週間後、とても小さな一つの転機が訪れることとなる。
取得難易度A忍術螺旋丸。その第二段階へと、白は進む。
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