第三十四話 擂り潰してやるさ
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利を収めるためには戦闘以外にも謀略をしかけて相手を弱める必要があります」
三人が頷いている。
「閣下の御深慮、恐れ入りました」
ロイエンタール提督が三人を代表する形で発言すると司令長官は“深慮なんかじゃありません、ただの小細工です”と苦笑を浮かべた。いや十分凄いわ、小細工なんかじゃない、そんな事考え付くなんて。
「では例の八人は如何します? ずっとブリュンヒルトに拘留するのでしょうか?」
総参謀長が小首を傾げている。
「オフレッサーが裏切り者として処断されたらガイエスブルクに帰しますよ、彼らに自分達が騙されたのだと分からせないと」
「なるほど」
「騙された事が分かればプライドの高い彼らの事です。怒り狂って攻め寄せて来るでしょう、そこを叩く。……今のままではガイエスブルクで要塞攻防戦になりかねません。時間もかかるし損害も大きくなるでしょう、それは避けたいと考えています」
なるほどねえ、感嘆しか出ないわ。皆もうんうんって何度も頷いている。
ロイエンタール、ミッターマイヤー両提督が帰った後、司令長官はオーディンのエーレンベルク軍務尚書にレンテンベルグ要塞の攻略を報告した。その際、オフレッサー上級大将が寝返った事も報告した。もしかすると軍務省に貴族連合に通じている人間が居るかもしれないから念には念を入れようという事らしい。まあなんて言うか敵も味方も自在に操っている感じがするわ。当代無双の名将か、確かにそんな感じよ、この人相手に勝てる人なんて思いつかない……。
帝国暦 488年 4月 20日 帝国軍総旗艦 ブリュンヒルト エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
「久しぶりですね、元気でしたか」
「……」
感じ悪いな、押し黙ったままとか。元気ですとか具合が悪いですとか色々あるだろう。それなのに俺の目の前に居る馬鹿八人衆は蒼白になって黙りこくっている。まあ全員非武装だし周囲を屈強な男達に囲まれているからな、殺されるんじゃないかという不安は有るだろう。
メックリンガーとヴァレリーも連中を冷たい目で見ている。でもまあ二人は例の事件の真相を知らないからな、疑ってはいるだろうが確証はないはずだ。フレーゲルとシャイドも内心では怯えているだろう。俺は何も知らない振りをする、フェルナーにも席を外させた。
「……我々をどうするつもりだ」
「どうしたものか、それを考えているのですよ、フォン・ヒルデスハイム」
「ヒルデスハイム伯爵と呼べ!」
予想はしていたが吹き出してしまった。生死の狭間でそこまで爵位にこだわるって俺には良く分からん精神だな。いや或いは生死の狭間だからこだわるのかな、ヒルデスハイム伯爵として死にたいと……。
「正確には元伯爵ですね」
「貴様!」
顔を真っ赤にして怒っている。可愛い奴。
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