第七章
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。それを知らないとはまだまだ甘い」
「何だと」
死霊はその言葉に対して問うた。
「黒い炎だと」
「そうだ」
速水はニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。そして言う。
「見たことはないようだな。その炎を。ならばいい」
言いながら身構える。
「それは幸いだ。何故なら絶対的な恐怖を知らないのだから」
「絶対的な恐怖」
「わからないならいい。だがそれはあちらの世界で知ることになる」
そう言いながら左腕をゆっくりと動かす。そしてそこに左目から放たれる黄金色の光をあてる。
「先に死んだ者達からな。私ができるのはそちらに送ること」
光が腕に満ちた。すると彼はそれを下に向けて放った。
「消えろ」
腕が一閃された。すると光は矢となって海に突き刺さった。そしてそれで死霊の炎を全て消し去ってしまった。
「なっ」
「黒い炎ならこうはいかない」
速水はまた言う。
「私が彼女を虜にするにはまだ先のことだろうな、残念ながら」
「またわからぬことを」
「だから言っているだろう。これは貴殿には関係のないこと」
彼は相変わらずであった。
「詮索は無用だ。ではこれで決めるぞ」
「来るがいい」
死霊は炎をまた出してきた。今度は両腕にである。
「その光で私を倒すというのなら」
上を見上げる。そして構えていた。
「やってみせよ」
「言われずともそのつもりだ」
また左腕に光を集めてきた。腕がまるで星の様に眩く輝いていく。濃紫の空にその黄金色の光が映えていた。
「滅せよ」
それが極限になったとみるやまた光を放った。そしてそれは先程と同じ様に光の矢となって下に向けて放たれる。それは一直線に死霊に向けて襲い掛かる。
「この程度で」
死霊は呻いた。そして両手を上にかざす。その手に宿らせている炎で防ぐつもりであった。
光と炎が激突した。両者は拮抗しているように見えた。だがそれは一瞬のことであった。
炎が消えた。まるで霧の様に煙を立てて消える。そして遮られるものを消し去った光はそのまま死霊に向かって降り注ぐ。死霊はそれをまともに受けてしまった。
「ぐはっ」
苦悶の声が漏れる。だが顔は変わりはしない。やはり彼は声だけで苦悶をあげていたのであった。
「これで決まりだな」
速水は下を見下ろしたまま言った。
「全ては終わった。その光を受けて退かぬ異形の存在はない」
ゆっくりと下に降りながら言う。
「違うか。最早この世界に留まってはいられぬだろう」
「確かに」
もう今にも消え入りそうな声となっていた。死霊はその声で言う。
「どうやら。私はこのままこの世界を去らなければならないようだな」
「そうだ。どうやらこの左目には貴殿も適わなかった様だな」
「うむ」
彼は頷いた。
「上からそれを放つとはな
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