第七章
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まで隠されていた顔の左半分が姿を現わした。
そこは顔自体は右半分と変わらなかった。白い、彫刻の様に整った顔がそこにあった。そうした意味では左右対称であった。
だが決して対称ではなかった。それは目にあった。右目は黒であったが左目は金色であった。夜の闇の世界にまるで妖星の様に輝いていた。
「その目は」
「これが私の目だ」
彼は言った。
「この目は全てを見る。そう、何もかも」
「何もかもか」
「この世にないものをな。だからこそ私は占い師になれた」
言葉を続ける。
「そして死者の世界を覗くこともできた。全てはこの目の為にな」
「それで退魔師にもなれたのだな」
「そうだ。それまでには色々とあったがな」
そう語ったところでふと顔に陰がさす。
「だがこれもまた貴殿には関係のないこと。この左目は全て異なった世界を見、そして死せる者達を退ける為にある」
「ではその目の力を使うがいい」
死霊は彼を挑発するようにして言った。
「そして私を退けてみよ」
「無論」
速水は動いた。
「だからこそこの仕事を引き受けたのだからな」
左目が輝いた。すると彼は急に姿を消した。
「消えたか」
死霊はそれを確認して呟いた。その態度にはまだ余裕があった。
「それもまた目の力だったのだな」
「そうだ」
姿は見えないが声だけは聞こえてきた。
「この目は私に魔力を与えてくれた」
彼はまた言った。
「その魔力の結果だ。この姿を消すことも。そして」
突如として空中にタロットカードが現われた。そしてそれが死霊を襲う。
「ムッ」
「このカードを使う術も。全てはこの黄金色の目の力だ」
「邪眼の力というわけか。これも全て」
死霊も姿を消した。そしてそれでカードをかわしたのであった。正確には死者の世界へ一瞬戻ったのであろうが。
「面白い。どうやら今までの者達とは違うな」
「私を侮ってもらっては困る」
速水はまた言った。
「この目もな」
「そうだな。では私も力を見せよう」
死霊はこう言って甲板の中央に姿を現わした。
「この力で。その目も何もかも滅してくれよう」
身体全体にあの青白い炎を出した。そしてそれを艦に撃ちつけた。
「焼けよ」
彼は言った。やはりその顔は全く変わりはしない。声の調子だけが変わった。
「生きる世界にいようとも死せる世界にいようとも。この炎からは逃れられはせぬ」
炎が艦を覆った。死霊はその中心に立っていた。
「これなら逃れられまい」
死霊は立ち上がりながら述べた。その顔はぼんやりと前を見ているように見えた。
「この炎は。どちらの世界にいようがそなたを焼き尽くすぞ」
「それはどうかな」
だがそこで上から声がした。
「炎を避ける場所は何処にでもある」
「何っ」
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