第五章
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術が効かなかったのか」
「言った筈だ、私は退魔師だと」
彼は死霊を見下ろしながら言う。
「そちらの術には抵抗があってね」
「面白いな、それは」
死霊はそれを聞いて笑った。
「ではそれをもっと見せてもらおうか」
「無論そのつもりさ」
彼は空中で姿勢を整えながら言う。
「そしてあちらの世界に帰ってもらおう」
「帰るつもりがないと言ったら?」
「貴殿に拒否権はない」
彼はなおも言い返す。
「ここは生きる者の世界なのだから。死せる者の世界ではない」
「ではやってみるがいい、私を送り返すことを」
「言われずとも」
身体の周りのタロットカードの動きが速くなった。
「見せてやる、速水丈太郎の術を」
「それで私を送り返せるのなら名」
タロットカードが舞い降りた。そして死霊に襲い掛かる。
「フン、何かと思えばジプシーのカードか」
彼はそのカードが何かを知っていた。
「この国でも使っていたのだな、祖国だけでなく」
どうやら彼はジプシーもタロットも知っているようである。
「日本ではタロットもよく使われる」
速水は彼に対して言う。その間にカードは一直線に死霊に襲い掛かる。
「ジプシーでなくともな。誰でも使うことができるのだよ」
「霊感を持っていればか」
「そうだ」
彼は答えた。
「それはいいことだ。ポルトガルではそうではなかった」
「ポルトガルでは」
「あの時の我が国は教会があまりにも強くてね」
唇を開くことも動かすこともなく述べる。ただ目だけが動いていた。だがその目はあくまでカードに向けられている。彼は速水すら見てはいなかった。だがそれでも彼の姿も見えているようであった。おそらく目では見てはいないのだろう。
「占いは法度だったのか」
「そんな時代からいたのか」
「そうだ。あの時はよかった」
彼は言った。
「海へ行けば何でもあったのだ。栄誉も富も何もかもな」
大航海時代である。富を求めて港を後にした者達はそこから多くのものを手に入れた。胡椒に金、そして宝を。またあらたな大地を。大航海時代は野望の時代でもあった。
彼もまたその中にいたのだ。そして野望と栄光、そしてそれに従う富を求めていた。だがそれは大きなリスクを伴っていたのであった。
「生憎それに失敗してしまってな」
「そうか」
速水は彼がどうして死者の世界の住人となってしまったのかこの時わかった。
彼はおそらく航海中に海の中に沈んでしまったのだ。そして死んだ。だが海のことを忘れられず今もこうして生者の世界にその心を置いてしまっている。死者の世界にいながらその心を生者の世界に置く死霊となってしまったのだ。
「そして今こうしてここにいる」
「海を求めてか」
「ただ海が好きなだけではないがな」
「野望をまだ追っ
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