第二部 文化祭
第35話 すれ違う想い
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「パパー!」
「ち、ちょっと待ってユイちゃん!」
少し遠く、後方から、ユイと──そしてアスナの声が聞こえた。
「パパ!」
俺を見つけたユイが、こちらに駆け寄ってくる。
「い、一体どうしたんだユイ」
「ママがパパに言いたいことがあるって」
──まさか
早くこないだの返事出しやがれ、とか? ウジウジしてんじゃねーよ、とか?
「な、なんでしょうアスナ……様?」
「なっ、にって、あの、それは、その……」
アスナは意味不明な言葉──言葉にもなっていないか──を発している。
思わず、この間のことを思い出す。俺は慌てて目を反らした。
「……あの時のこと思い出してるの?」
「ま、まあ、はい」
「顔、赤くなってるよ」
アスナの指摘に、急いで顔を背ける。
アスナは言った。
「……い、今すぐ。今すぐ忘れて」
忘れて、というのは、この間のアレのことだろう。
「え、はい頑張ります」
「や、やっぱり絶対忘れないで」
「は、はあ……」
「やっぱ忘れて。キリト君のバカ」
「ごめんなさい」
──気まずい。非常に気まずい。
「こ、この間のは、冗談だから」
震える声で彼女が言う。
「あの時は、ちょっと……甘酒飲んで酔っちゃってて、普段だったら絶対に言うわけないようなことを言っちゃったの」
胸がチクリ、と痛む感覚。
「別に、君に変な気持ちがあったわけじゃないし」
痛みは冷気を纏って、俺の体を抉るように侵入してくる。
「君なんて、ただのクラスメート以外の何者でもないから」
足が震える。こうして立っているのが精一杯だ。
「君のことを好きだなんて思ったこと、一度も」
そこまで言ったところで、アスナがはっとしたように言葉を止めた。
──そうだよな。
なにを期待していたのだろうか。
アスナは成績優秀で、学園一の美人。俺みたいな地味な男に、なんの魅力を感じようか。
「は、はは……」
自分を嘲った。もうそうする他ないから。
「そ、そうだよな。わかってたよ、うん」
「キリト君、これは、ちが……」
アスナがふるふると、ゆっくり首を振る。
「思わず勘違いしちゃったよ。ほんと、アスナの言う通りバカみたいだな……てかバカか」
「ちが、違うよキリト君……これは」
「……笑ってくれよ」
その声は、自分でも驚くほどに荒れていた。
「バカなやつだなあって、笑ってくれよ。そうじゃないと俺……どうしていいかわかんないだろ」
アスナが俺の手に手を伸ばす。
「違う、本当に違うの。信じて……ね、キリト君。話を聞いて」
「触らないでくれ」
アスナの手を乱暴に振
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