暁 〜小説投稿サイト〜
私立アインクラッド学園
第二部 文化祭
第34話 ユイ

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「あ、あのさアスナ」
「あ、もうこんな時間。生徒会会議始まっちゃう。早く行かなくちゃ」

 アスナは俺を完全に無視し、たったっと廊下を走り去っていった。

「今日は会議なんてないだろ」

 俺が言うも、アスナの耳には届かなかったらしい。
 ──完璧に避けてるよな。
 溜め息を吐き、身を翻した。

 **

 ──完璧に避けてしまった。
 あの日明日奈は、和人と気まずくなることを覚悟で想いを打ち明けたはずなのに。
 後ろから和人が叫ぶ声が聞こえる。

「……わかってるわよ」

 さっきのは嘘。和人の言う通り、会議なんてない。
 ただ、今は和人とどう接していいのかわからないから。無理に前と同じように接そうとして、和人に嫌われたり、明日奈自身が和人を嫌いになってしまうことが怖かったから。──和人にふられてしまうことが怖かったから。
 それで、あれ以来和人とは何も話していない。

「……ママ?」

 いつの間にやら明日奈の傍らに来ていたユイが不安そうに言う。

「パパとママ、ケンカは嫌!」
「け、ケンカなんてしてないよユイちゃん」
「じゃあなんでパパのこと無視するの?」
「無視だなんて……」
「してるよ。ユイ、わかるもん」

 ユイの瞳に宿る光は真剣だった。幼い少女は続ける。

「ママは、パパにごめんなさいするの!」
「えっ、でも」
「するのー!」
「あっ、ち、ちょっ、ユイちゃん!?」

 ユイは明日奈の手を強く引いた。

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