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第一章〜囚われの少女〜
第十五幕『悪魔の所業』
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 赤、(あか)。背景は血の色で真っ赤に彩られた。
 胸より少し斜めに外れ剣が刺さったまま、ジュリエッタはすぐに運ばれた。
すると王は兵をここへ呼んだ。
「衛兵、衛兵よ! 今すぐここへ来い! こやつを――」
すぐさま現れた2、3人の衛兵に対し、王は非常な声で指図する。
「今すぐこやつを捉えよ! 直ちにこの物を牢へ」

そのまま、そこに居た誰もが一言の言葉も発さず。
魂が抜けたように気力のない――生きた屍と化したエリオ。
うなだれたままその体を引きずられ、連れて行かれてしまったのだった。

 そこから一人残された、王の皮肉な一人芝居。
「ああ、何ということだ……嫁入り前の娘に傷をつけてしまったとは……」
その嘆きは醜いまでに愚かなものだ。
「嫁に断られてしまっては困るのだ。
せっかく良い縁談を結ぶことが出来たというのに……。
エリオめ、極刑にしてくれる!」
 いかにも大袈裟に、まるで道化を演じるかのように。
それはどこか喜劇めいても見えた。
悲劇と喜劇――それは見るものによって感じ方が選ばれるのだろう。

「やつには罰を……。
娘よ。愚かな私を許しておくれ」
 愚かな王の嘆きは終わらない。


――


 その晩王は夢を見た。
悪の形相の仮面で夢枕に立つのは、我が愛しき娘ジュリエッタ。
娘はまだ生きているはずだ――ともすればこれは生霊か。
暗黒の渦を背景に、恨むような声と表情で王に囁く。

『よくもエリオを囚人に……愚かなお父様。
私がエリオをわがままに巻き込んでしまったのがいけないの……』

呪う言葉を口にする。

『だから、罰を受けるのはこの私……そしてかの国との縁談は破談。
この国は戦場となり滅びるの。
エリオに酷い仕打ちをするのなら……私はあなたを呪うでしょう』

 悪夢にうなされ、どうにもいたたまれない居心地の悪さから国王は目を覚ました。
「おお、ジュリエッタよ……わしは一体どうすればよいのじゃ」
目覚めた後も居た堪れない心持ちで、その顔は青ざめたままだった。


――


(ずっと見てると尻が痛くなってくるぜ)
 劇場に潜む悪魔は素行が悪く、一階の連なる客席の脇の階段を陣取っていた。しかし誰も、注意しようとする者はいない。その眼光で威圧でもされたのか、または芝居に魅入っているかのどちらかだろう。
 そして悪魔は退屈そうにため息をつく。
(はあ〜、ちょっと体がなまってきやがった)
 静寂と暗闇の中、そこに溶け込む黒子のような真っ黒い男は立ち上がり、伸びをする。周りの客からすれば、何と迷惑な人物なのだろう。
(ちょっくら二階席に、お邪魔でもしてみようか)
 男は何を思ったか、二階の王座を見上げる。そうして体を屈伸させたり左右の足を伸ばしたり
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