第一章
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「はい、とにかく妙で」
その船員は話を続けた。
「そもそも出火原因もはっきりしませんし」
「はあ」
「食堂で出たと思ったらすぐに消えて甲板で出たり。今は艦橋です」
「艦橋で」
「出たり消えたりしているといった感じなんです。とにかく妙な火で」
「そうなのですか」
「それでも貴方達が来てくれたのは非常に有り難いです。それでは宜しくお願いしますね」
「はい」
こうしてこの艦の自衛官達は消火活動及び救助活動をはじめた。だがここですぐに異変が起こった。
艦橋の火が消えたのである。そして今度はエンジンであった。
「艦橋の火が消えた?」
艦長はそれを聞いて眉を顰めさせた。
「はい。そして今度はエンジンルームで出火だそうです」
「消火活動の前に消えたのか」
「はい。どういうわけか急に」
通信士がそう言う。
「今火が消えた原因を調査中ですが」
「それは後でいいな。まずはエンジンルームの火だ」
「はい」
「そちらを消してからゆっくりと調べよう、いいな」
「わかりました」
しかしまた異変が起こった。そのエンジンルームの火が完全に消えたのだ。
「またか」
「今度は完全に消えたようです」
そう連絡があった。
「今は負傷者の救助に専念していますが」
「そうだな。主軸はそこに置こう」
それは艦長もよしとした。
「機関長他数人の先任海曹を調査に回して総員救助活動にあたる。いいな」
「わかりました」
こうして救助活動に主軸が置かれた。そちらは順調に終わり数時間もすれば終わった。こうして一連の活動はとりあえずは終わった。
「有り難うございます」
客船の船長は護衛艦の艦橋まで行き艦長に謝礼を述べた。
「もう少しで取り返しのつかないところになるところでした」
「いえ、礼には及びません」
だが艦長はその礼をよいとした。
「これが我々の仕事ですから」
「仕事」
「はい。国民に何かあれば、我が国の領海内で何かあればすぐに動くのが我々の仕事なのです。ですからこれは当然の
ことなのです」
「そうなのですか」
「はい。ですから御気になさることなく」
こう言って礼をよしとした。だがこの船長と船員、客達から深い謝礼が送られた。
このことはマスコミに大々的に取り上げられた。そして艦長とこの艦の乗組員達は自衛隊においても話題となった。多くの人命と船を救ったことで彼等は一躍人気者となったのである。
だがそれでも艦長も乗組員達も気は晴れなかった。それはこの艦に原因があった。
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