第一章
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救助した」
「そうだったのですか」
「それから全然なかった。ましてやここではな」
東京湾である。横須賀に停泊する艦隊の受け持ち海域である。だから彼等は今ここに出っ張っていたのである。
「まさかあるとは思わなかった。それでその客船だが」
「はい」
艦橋の端で色々と作業をしていた白い顔の青年が顔を上げた。
「今どういった状況だ」
「決して思わしくはないようです」
その青年は答えた。見れば太い線が一本の紫の服を着ている。階級は三等海尉である。
「思わしくないのか」
「はい。火災は全く鎮静化する見込みはないとのことです」
「厄介だな」
艦長はそれを聞いて顔を暗くさせた。
「応急長に連絡してくれ」
「はい」
若い士官はまた答えた。
「応急班は全員今から準備にかかるようにと。消火活動だ」
「わかりました」
「そして通信士」
艦長はまた若い士官に声をかけた。
「はい」
「他の者にも準備はさせておくようにな。厄介な仕事になるかも知れない」
「わかりました」
通信士はそれを受けて艦内に指示を出す。
「総員消火活動用意」
それが下ると一気に艦内に緊張が走る。皆顔が変わった。
「そろそろだな」
艦長が前を見ながら言った。
「その客船が見えてくるのは」
「はい」
艦橋の横から声がした。
「見えました」
見張員から声がかかってきた。
「煙吹いています。かなり燃えてます」
「そうか」
「場所は?」
副長が見張員に問うた。
「少し左です」
「よし、取り舵だ」
「とーーーりかーーーーじ」
それを受けて航海長が左手を大きく旋回させる。操舵手がそれを見て舵を左に切った。
こうして艦は左に向かう。そして暫くしてその客船を発見した。
「あれだな」
「はい」
副長は艦長の言葉に頷いた。
「間違いありませんね」
見れば燃えていた。そして高い煙を吹き上げている。
「どうやら間に合ったようですが」
「だが急がなければならないな。総員に指示を出しておいて正解だった」
「はい」
「すぐに接舷する」
艦長は指示を出した。
「そして総員で消火及び救助活動にあたるぞ。いいな」
「了解」
こうして消火及び救助活動が開始された。まずは艦長の命令通り接舷される。そしてそこからホースや様々な機具を持った自衛官達が次々と客船に入る。そしてすぐに活動を開始した。
「自衛隊の方ですね」
「はい」
その中の一人が客船の船員の言葉に応える。船員はそれを聞いて急に救われたような顔になった。
「よかった、間に合ったんですね」
「何か大変だったみたいですね」
「ええ。とにかく厄介な火でして」
彼は説明をはじめた。
「消えたとおもったらまた出て来るんですよ」
「また!?」
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