第十二話 〜両軍〜
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だが、どんな顔をしているのかは想像はつく。
きっと複雑な気持ちに表情を歪ませているか、はたまた怒りに表情を歪ませているかのどちらかだろう。
前者であればこの後に早速北国に対しての具体的な対策が話し合われるだろう。
そして後者であれば...。
『...あいつは』
そして父の口から第一声が放たれた。
重臣達の緊張は一気に限界点へ達した。
『あいつは自分から従軍を申し出たのか?』
私はその言葉で思わず口元を歪ませた。
依然としてピリピリとした空気が流れているのにも関わらずにだ。
そう、私はその言葉で全てを察した。
『はい』
私は顔を上げてしっかりと答えた。
『...そうか』
『...死に場所が出来たか』
父はぼそりと呟いた。
『では今後についてだが、何か意見のある者はおるか?』
一瞬何が起こったと言わんばかりの驚きが重臣達の中でおこる。
そんな状況からは皆後者を想像していたのだろうというのが伺える。
そのせいで今の一連の流れからどうして私に対してのお咎めも無しに話が進むのかを理解できていないようだ。
仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないが少し寂しい気もする。
多分父も同じ気持ちだろう。
だが、このままでは話が進まない。
国の一大事について国王から質問されたのだ。
ならば臣下はそれに応えねば。
『当然、国を挙げて戦仕度を整えるべきでしょう』
『じゃな。それについては皆同意でよいな?』
依然として重臣達の動揺は続いてはいたが、父は先程のやり取りに対してわざわざ解説するつもりは無いようだ。
無論、私もそんな野暮な真似はしない。
『ふむ、異論は無いな』
半ば臣下を置いてけぼりにしている感じはあるが逆にこの後に及んで北国との平和的解決を申し出る者はいないだろう。
仮にいたとしても、あちら側からの一方的な裏切りに対してこちらから歩み寄る事はありえない。
皆それは重々承知しているはずだ。
『では直ちに晏城にて守備を整えよ。また、国内にも戦の旨を』
『は、直ちに』
『皆の者!』
父が声をあげる。
皆父に向き直る。
『これより再び北国との戦へと入る!各々思うところはあるだろうが、北国と我々の関係は既に切られた!短い間の平和ではあったが、それらは本来ならば我々が守り抜いて得るものだ!』
父の力の篭った演説は本来の歳を思わせない程に空気を震度させ、私たちの心を揺する。
そしていつの間にか先程までの動揺が嘘のように臣下達の目は皆固い意思を宿していた。
これが父の、王者の演説か。
私の中で改めて父への敬意の念が強まった。
『きっと昔のように、いや、昔以上に厳しく長い戦になるだろう。だが
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