第十二話 〜両軍〜
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もらいたかったが残念だ。
...いや、見ない方がいいのかもしれないが。
『...洋班様はどうしておられる?』
私は話を切り替えし、これからについて話す事にした。
『関にいた兵に聞いたところ、帰って来るなり”会都”へ使者を出したと』
『...援軍か』
『だと思われます』
『...まぁ、このまま戦争になったら我々の兵だけではこの関を守りきれんからな』
本当ならこの時点で直ぐにでも蕃族に使者を送ってこちらの手違いの謝罪とそれに伴う誠意を持って再び停戦の交渉ができないか試すのだが、何分今回敗戦を喫したのはあの洋班様だ。
仮に彼自身の汚名や恥、怒りをどうにかできたところで親である州牧様の面子もある。
どの道開戦は避けられない。
ならばもう、これからの戦争を前提に物事を考えなければならない。
『では、早速住民達への開戦の通達を...』
『待て凱雲』
『はい?』
『お前は夜中の戦闘で疲れただろう。今は休め』
『いえ、戦争が始まったばかりなのに整える物を整えていない内に休む訳にはいきません』
『いや、しかし...』
『それに豪統様こそ豪帯様の御様子を見にいかれてはいかがですか?その間にやれる事はやっておきますので』
『...いや、いい』
『いいのですか?』
『...あぁ』
確かに帯の事は心配ではあるが、それよりも私は私のやるべき事をしなければ。
関に住む民を守る者として。
『...そうですか。では私は街に看板を...』
『いや、お前は休め』
『...しかし』
『命令だ』
『...わかりました。では少し休養をいただきます』
『あぁ。まだ援軍が来るまでには時間はある。ゆっくり休め』
『ありがとうございます』
そう言うと凱雲は部屋を出ていった。
『...ふー』
それを確認してから私は一息をついた。
『...まさかこんな事になるとはな』
私は先程とはまた別の愚痴を漏らした。
今度は一人の親としてのだ。
本当なら今回の賊討伐の仕事を最後に帯との時間を増やすはずだったのだが、こんな状況では時間を増やすどころかまた内地へ帯を避難させなければいけなくなってしまった。
当然理由は帯の身を安じての事だ。
内政事なら幾らでも手伝わせるが、戦闘に関しては参加させるつもりはない。
だが、問題は果たしてそれを帯が素直に受け入れてくれるかどうか。
仮に帯が素直にそれを受け入れた所で結局また寂しい思いをさせてしまう事には変わりない。
それを思うと私の中で帯への罪悪感がふつふつと湧いて来ていた。
『仕方ない...か』
それに、今後はまた洋班様の直轄の元不甲斐無い父の姿を延々と晒す羽目になる。
それを一人の親としてこれ以上子供に見られたくはない。
『.
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