第十二話 〜両軍〜
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けにそんな話しを持ち出してくるとは。
私も見捨てられたのかもな。
私はそこで彼の話しへの興味を失い、彼に聞こえない程度の溜息をついた。
ドンッ!
『ッ!?』
だが、急に私の目の前の机の上が叩かれた事で再び意識が覚醒する。
一瞬状況が飲み込めなかった。
『...豪統様、まだ話しは終わってはおりません』
だが、眼前に迫った真剣な凱雲の顔と半ば怒りの篭った声で直ぐに私の態度への改めてを要求してきている事が理解できた。
『...すまん』
私は顔を下げ、だが手は机の上に置き再び聞く意思を凱雲へ示した。
『...私は自分を一塊の武人であると思っております』
凱雲は話しを続けた。
『そして、本来武人というのは命を掛けた戦場ではその一撃に自らの生き様や信念を込めるものだと思っております。当然、これは武人同士で無ければわからぬと思っております』
『...』
凱雲は私に対して一息置いて”信じてくれますよね?”と言ってきたような気がした。
私としては自分を彼の言う武人には程遠いと思っている分彼の言っている事が図りきれないが、それでも彼の事は信じているつもりだ。
『...あぁ』
私は彼の言葉に返答で返した。
彼は話しを続けた。
『そして私はその手合わせの中でその老将の生き様や信念を感じました。そうしてみると、どうにも彼は今回の出来事をただ嘆いている様には思えないのです』
『...では何故”裏切った”と?』
『次の友好こそ長く続いて欲しいが為でございましょう』
凱雲は私の質問にハッキリと答えた。
何の根拠もない答えをだ。
だが、凱雲の言いたい事も何と無く理解はできた。
きっと凱雲が言う事が正しいのなら、手合わせをしたその老将は次があるかどうかもわからない友好関係の為にその友好関係の価値や重さ、それらを十分に理解して欲しいくて改めて責めるような事を言ったのだろう。
『次の...か』
だが、果たしてその”次”がこの国に訪れるのだろうか。
『えぇ、次でございます』
だが、目の前の彼はその次を信じている。
そして彼と手合わせしたその老将もまた...。
『...ならば、期待させたからには責任は取らねばな』
私は再び決意した。
崩れてしまった信頼関係。
それを再び取り戻すのだと。
...どんな形になろうと。
私は顔を上げた。
『凱雲。礼を言うぞ』
『いえ、とんでもございません』
凱雲。
お前には助けられてばかりだ。
私はその言葉を口にせずに心の中で呟いた。
『ところでその老将は?』
『一騎打ちの末に立派な最期を遂げました』
『...そうか』
できればその老将にも今後の時代の流れを見届けて
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