六話 「波の国」
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ったかね。
適当にそこらを探すが、あいにくこの世界に自販機などない。適当な店にでも入るしかないか。
「なんか店あるか?」
「……あ。あそこにお店があります」
指差された先には小さな幟をつけた店が。
近づいてみると、掠れてはいるが確かに“茶”と書かれている。
どうやら茶葉を始め、色々小物を扱う店らしい。
試飲でも出来ると嬉しいのだが、どうだろうか。
団子屋にでも入って茶の頼めば、団子も頼まねばならん。正直、さっきの饅頭で結構腹が膨れているのでそれは勘弁したい。
中を見ればいくつかの茶葉が詰められた筒に、髪に挿す櫛や纏めるゴムや紐なんかもあるみたいだ。
(お、珠葉澄がおいてある)
来る途中の島で飲んだお茶の名前を見つけ、是非買おうと思う。
舌に残らないさっぱりとした渋さが美味く、確かおっさんも結構飲んでたやつだ。
(だからといって、おかわりの為だけに何分も残んないでほしかった……)
苦い思いを思い出しながら、中の初老のおじさんに声を掛ける。
「あの、すみません。そこのお茶の試飲は出来ますか? 買いますので」
「ああ、なんじゃい。お前の様な小僧が茶の味分かるわけなかろう。背伸びしたい年頃か? ん?ん? ガハハハハハ!」
……そうくるか白髪ジジイ。
頭に手を置かれ、乱暴に髪を触られる。
完全に見た目からして舐められているようだ。まあ、確かに子供がお茶を買うのは珍しいかもしれないが。
だが、それでも引くかバカジジイ。
「それ、珠葉澄ですよね。渋めの」
「……ほう、知っとるか小僧。どこで聞いた? だがな、小僧にはちと高いぞ。ママからのおこずかいじゃ買えんなぁ」
置いてある値札を見る。確かに高い。
否、かなり高い。
確かに運送費などがかかる。それも水の国という他国。高くなるのは分かる。
……安く買ってやる。
そう思うが、どうしたものか。
先に白に言った事を考えればある程度の歳に化けるのが道理。だが、このままでは負けたように思えてしまう。
(買う力があるのを見せてから、一端出て化けるか)
懐から財布を出し、軽く開く。
そこには幾枚もの札が並んでいる。伊達に親の金を持って来てはいない。
これだけでなく、カバンの方にはまだ貴金属の類もある。へっ、分かったかクソジジイ!
ジジイがこっちを見ているのを確認してから店を出る。
そう言えば、白はどこだろう? と思っていたら店の外にいた。
そうやら、外に並べてある品を見ていたらしい。
(ふーん……)
一通りそれを見てから白に声を掛け、路地に入る。
白に路地の入口に立たせ、人の眼に注意させておいて化ける。
これからここで動く際に使うかもしれない姿だ
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