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弱者の足掻き
六話 「波の国」
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顔をするが、正直自分でも何を言っているのか分からない。
 というか、今の半セクハラじゃねぇか。
 自分が今どうしようもないほどに焦っているのが分かる。
 意味もない思考を繰り返し、言葉が上手く出てこない。

「その、僕は刀なんて持っていませんけど」
「ああ、うん。見ればわかる」

 そう、見て分かるから分からないのだ。
 きっと白は、本物の刀の事を想像しているのだろう。それで持っていないから持っていないと答えたのだろう。
 当たり前だと内心思う。先の質問は混乱して言ったわけの分からない例え。分かるはずがない。
 そんなこと、言う前に理解する事さえ理解出来ていないのだ今の自分は。
 そもそも、理解することを拒んでいるのだ自分は。その程度、理解できる。
 だが、先延ばしにしても何にもならない。
 そう思い、事実を問いただす言葉を、つい震えてしまう言葉をなんとか口にする。

「その……白ってさ、女の子?」
「はい、そうですよ」

 小さく微笑みながら白が頷く。

(ええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!)

そんな白から目が離せないまま、心の中でひたすらに驚愕の声が響き続けた。



「上がり……ました……」
「大丈夫ですか?」

 脱衣所の扉を開け、出ていく。
 のぼせた体があつい。
 意識が飛び、気づいた時には結構長い事湯船につかっていたようだ。
 ようだ、というのもそもそもどのくらい浸かっていたのか覚えていない。
 そんなこっちを心配してか、白がこっちを覗き込んでくるがよく頭が回らない。そもそも、今白を見ていると混乱が増長しそうで困る。
 
「大丈夫だから……水、持って来てくれ」
「はい。直ぐに」

 白が台所の方に走って行くのを見ながら、息を吐いてその場に座る。
 白が近くにいない間に少しでも落ち着かないといけない。

 視界が揺れる。地面が揺れる。世界が揺れる。
 一歩踏み出せばどこまででも落ちていきそうな浮遊感が体にまとわりつく。
 頭が重い。思考が揺れ続けている。一体どうしろというのか。
 考えれば考えるほど思考の泥沼に嵌って行っているのが分かる。けれど止める者がいない中、止まれない。
 頭痛が一定のリズムを刻み少しずつ自分の中の境界線に波紋が広がっていくのが分かる。
 空気に自分の体が溶けていく、そんな妙な感覚が茹だったカラダは感じていく。
 
 そんな中聞こえてきた声に顔を上げる。
 
「おう、どうした。顔が赤いぞ」
「少し長湯しすぎました……はぁ」

 おっさんが近づいてくる。
 こっちが辛そうなのが分かったのか鍋敷きで軽く扇いで来てくれる。
 なんか変な臭いもするが風が顏に当たるだけで涼しくてありがた
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