第百三十九話 千草越その二
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柴田は千陣を率いながら道の左右を見ていた、その道はというと。
「どうもな」
「ですな、やはり険しいですな」
「左右は木と岩ばかりです」
「幾ら浅井殿でもここには来ませぬな」
「流石に」
周りの者達が柴田の言葉に答える。
「忍の者を刺客に置くにしても」
「ここでは弓矢も鉄砲も満足に使えませぬ」
「どこもあまりにも足場が悪く何処からも道はよく見えませぬ」
「忍の者がいても大丈夫ですな」
「ここならば」
「大丈夫であろう」
柴田も言うのだった。
「ここはな」
「では岐阜まで行けますな」
「険しい道ですが」
それで行軍は難しくなっている、だがそれでもだというのだ。
「このまま行きますか」
「無事に」
「そうする、何としてもな」
岐阜に戻るというのだ。
「では進もうぞ」
「はい、それでは」
「このまま」
千陣はこのまま順調に進んでいた、そうしてだった。
信長もまた順調に進んでいた、険しい道だが馬で進む。
その中でだ、彼は今傍においている竹中にこう問うた。
「半兵衛、聞くがな」
「何でしょうか」
「御主は織田の軍勢はどちらに向かうべきと思うか」
「浅井か朝倉、どちらにというのですな」
「そうじゃ、どちらがよいか」
「浅井殿かと」
竹中が言う相手はこちらだった。
「むしろ浅井殿の方から当家の方に来られるでしょう」
「猿夜叉からか」
「はい、間違いなく長政様が出陣されます」
久政だけでなく彼だというのだ、出陣してくるのは。
「あの方が」
「久政殿ではないか」
「はい、あの方は戦が不得手ですので」
その為六角に従うことにもなった、久政は本来はあまり野心がなく強いことも言わない性格であるのだ。
「ですから長政様が」
「出るな」
「そう思います、そして」
「わしと戦いか」
「殿の御首を狙って来られるでしょう」
そうしてくるだろうというのだ。
「間違いなく」
「御主はそう見るか」
信長はここまで聞いて楽しげに笑って竹中を見て言った。
「次の戦のことは」
「はい、その様に」
「では御主はどうじゃ」
信長は今度は黒田を見た、息子共々姓をあらためたのだ。その彼に問うたのだ。
「どう思うか」
「はい、それがしも同じです」
黒田は信長の問いに確かな顔で答えた。
「やはり浅井家は長政様が出陣され」
「そしてじゃな」
「織田家に向かって来られるでしょう」
「そしてわしの首をじゃな」
「はい、狙って来られます」
「乾坤一擲の勝負をかけて」
「浅井の兵は一万と数千、それに対して我等は十万の兵じゃ」
それだけの差があった、兵の数は。
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