彼の『ふつう』
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「おいおい、蓮兄って呼ぶのやめろ
っていつも言ってるだろ? 『練乳』みたいに聞こえるじゃないか。てかさ、束いなくなるし、暇だし、暇潰しに釣りしてたら、もっと暇になるってこれはいかに」
やはり、蓮は『ふつう』に笑っていた。
後ろの方で、織斑くんの友達? もしかして、二人目? など聞こえるが、そんなこと気にもとめずに。
「だから、そんなことっ――」
「織斑、なにをそんなに騒いでいる」
一気に空気が冷えた。周りで騒いでいた女子も、一夏も。
唯一の例外は、細田蓮。なにも変わらず、『ふつう』にそこに立っている。
「千冬姉、それが……」
注意するのか、右手を振り上げる。あいにく手には何ももっていない。チョップでもするつもりか。
「織斑先生と……よ……」
千冬は固まった。あまりに、予想外すぎた。
「お、千冬じゃん、ひさっしー。水着か、久しぶりだなー、お前のを見るのは。美人だよなぁ、あ、中学とかのスクール水着は色気もへったくれもないから、ノーカウントなぁあぁうっ!!」
ズバンッ!! と空気を切り裂き、千冬の右手チョップは蓮の頭に降り下ろされた。
あまりの衝撃に蓮の口は開かれ、くわえていたスルメがポトリと砂に落ちた。
「だまれ、馬鹿者。なんでお前がここにいるんだ、部外者立ち入り禁止だ!」
「だからさー、聞いてくれよ。束に付いてきたのに、 束いなくなるし、暇だし、暇潰しに釣りしてたら、もっと暇になるってこれはいかにいぃぃぃぃっ! 」
再び、渾身の右手チョップが降り落とされた。こんどは、帽子が砂に落ちた。
「あー一夏、僕たちはお昼ご飯食べにいこっか?」
「そ、そうだな。行くか!」
触らぬ鬼神に祟りなしとばかりに、生徒たちはそそくさとその場を離れる。山田先生はただ、おろおろしている。
「あぁぁあ……、おい千冬……俺は束じゃないんだ、お前のそれを二回も受けて平気じゃないんだよ!」
「ふんっ、こんなところにいるお前が悪い」
頭を押さえながら、蓮は怒る。
「そんなんだから、嫁の貰い手がいないんだよ! そろそろ、適齢期過ぎんぞ!」
「なっ! 適齢期過ぎるのはお前も同じだろう! 第一、私を貰ってやるとふんぞり返っていたやつは誰だ、お前だろ!」
千冬もキレた。
「あぁ!? ガキの頃の話なんてノーカウントだ、てか、世界最強の嫁ってなんだよ、最近読んだよ、今日の夕食はあなたですってか!」
「まったく、お前は束のところばかり行っている。私だって楽しみにしていたぞ、十四歳まではな!」
「……以外と短いな」
「あぁ」
ふぅ、と二人同時に息をはく。
「まぁ、久しぶりだな千冬」
「そう
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