第四章
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があるという評価である。ロシアのピアニストブーニンはそう評価してやまない。もっとも彼は極端な日本贔屓でありこの言葉も日本のクラシック雑誌のインタビューで語ったことでありかなり主観やリップサービスが含まれているかも知れないが。だが日本のクラシック界がかなり実力をつけてきており、日本人達の造詣の深さもまた本物である。それは多くの耳の肥えた者達の存在を見てもわかるであろう。
「ですから一つのことを深く追求します」
「成程」
「特に趣味はね。詳しい人が多いのですよ」
「道を究めるのですね」
「そうも言いますね」
「そして貴方はタロットを究められた」
「いえいえ、まだまだ」
その言葉には首を横に振る。
「あのカード達が示すものはあまりにも深いです。ですが私はその片鱗さえも見ることができないでいる」
「そうなのですか」
「カードが示すことは一つとは限りません」
速水は言う。それまでとはかなり違い真剣な顔になっている。右目の光は不思議な色を帯びていた。左目の光は見えはしないが。
「一つとは」
「複数である場合もあります。それを読み取るのもまた」
「難しいのですか」
「そういうことです」
「ふむ、深いお言葉ですね」
もうファルネーゼ宮殿の前からは過ぎている。そして過去と現在が絶妙に入り混じった石の街を進んでいく。そこを進むだけで歴史が見えている。
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