兎追いし第1話
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を着いた。
――やった……。
と、異形となった顔の口元に小さな笑みを浮かべて雁夜は己が呼び出したサーヴァントを姿を捉えた。
そして瞬時に、その表情は喜びから驚きへと変わる。
魔法陣の中心にいる影は三つ。霞む視界ではぼやけた輪郭しか捕らえられないが、肌に感じる尋常ならざる魔力の圧力はそれが人智を超えた英霊に他ならないと告げている。
だが、驚くべきはそこでは無い。
雁夜は無事、サーヴァントを召喚して見せた。それだけならまだ良いだろう。だが、魔法陣内に居る影は三つ。五流魔術師の雁夜でもわかる異変。
サーヴァントの数が可笑しい。
原則として、サーヴァントは一人のマスターにつき、喚ぶ事が出来るのは一体まで。戦中に敵サーヴァントを自身のサーヴァントとする事例を除き、一人で複数のサーヴァントを運用するなど有り得ない。
しかし、雁夜の中では然したる問題に成らなかった。
自らの願い。自身の代わりに蟲に捧げられた哀れな少女を救い出すというそれに一歩近づいた所か一気に折返し地点まで前進したかも知れない。その思いは雁夜の心を奮い立たせるものの、身体は刻印蟲に食い荒らされており限界に近い。
それでも薄れる意識にあらがうように雁夜は右手を自身のサーヴァントへと延ばす。叶うことなら、自分と桜を連れてどこかに逃げてくれと願いながら。
しかし、限界だった肉体は言葉を発する前にあっさりと緊張の糸から離れ、今度こそ意識は深淵へと落ちる。……その最中、雁夜にはは誰かに抱き留められた。様な感覚があった。
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数分後、三つの影が夜の街を駆けていた。その内二つの肩に白髪の青年、紫色の髪を持つ少女が担がれ、人間離れした速度でもって屋根から屋根へと移動しているのはこの冬木の街で行われる「戦争」に参加するべく召喚に応じた一人の英霊と二人の反英霊。
気絶間際の主からの言葉にならない願い。それは、雁夜が呼び出した英霊達の下に間違いなく届いていた。
故に、喚び出された英霊の1人は近くにいた老魔術師の魂を喰って現界分の魔力を捻出。他2人はサーヴァントであってサーヴァントでは無いよく分からない存在だった為、マスターと彼の姪を担いで屋敷を出るなり屋敷の門に『内装工事中』の看板を置いて住宅街を駆け、商店街を飛び越し、川にかかる橋を通って新都へと到達した。彼らを追う者は居ないが、万全を期し、裏道からマンホールに入って下水道に身を隠す。
そこまでして漸くマスターの命を果たしたと判断した英霊達はその場に座る。
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