第四十八話〜焦りと燻り〜
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彼女の抵抗に眉一つ動かすことなく、ライは彼女の言葉を待った。
「い、もうと、たちに、は、てをだ、すな」
「……」
チンクの言葉にピクリとライは反応を見せる。
チンクは自分の命と引き換えに家族である妹を守ろうとしているのである。ライはそのことに少し懐かしさを感じると同時に、今の自分に嫌気がさした。
「ライ君!ダメ!!」
そんな中、突然大きな声が地下の空間に響いた。ライがそちらに視線を送るとそこには六課に行った筈のなのはの姿があった。
ライがなのはの存在に気付いた瞬間、ライはこれまで感情を感じさせない表情と目をしていたのだが、そこに人間らしいさをほんの少し見せた。
そしてそれが大きな隙となった。
「――!」
チンクは自分から視線が外れた瞬間、まだ隠し持っていたナイフを取り出し、自分の首を掴んでいるライの左腕、パラディンの装甲の隙間にそれをねじ込む。
そしてなりふり構わず、起爆させた。
「!しま――」
彼女が起爆させたのは、辺りに散らばっていたナイフも含まれ、その密閉空間から音が消えた。
その高威力の爆発は地下の壁、天井に亀裂を入れ、崩落を起こす。そしてその崩落はなのはとライたち4人を分断するように、大きな壁を形成した。
「ライ君!」
なのは叫ぶが、崩落の轟音でその声は届く訳もなく、しばらくの間その場にはコンクリートの擦れる音が響いた。
その後、結果だけを言うのであれば、ライが死体で見つかることはなかった。だが、後の現場検証で、大量の血痕と銀色の髪しかそこからは発見されなかった。
今回の公開意見陳述会を狙った襲撃は、管理局の大敗という形で幕を閉じる。
特に被害が大きかったのは、陸の戦力として期待されていた兵器、アインヘリヤルの破壊と、機動六課の施設破壊となった。
報告では、今回の管理局側の人的被害はほぼゼロに等しい。これは管理局の職員の能力が高かったわけではなく、襲撃犯側の手際が良すぎたことが原因であることは、誰の目にも明らかであった。
民間人もほぼ無傷であり、多少の行方不明者が出たがすぐに見つかるものが多く大きな混乱は起きなかった。
だが、生き残った管理局員が作成した行方不明者リストの内、二名は以前身柄の確認が出来なかった。
そのリストの名前の欄には『ライ・ランペルージ』、『保護児童・ヴィヴィオ』と書かれていた。
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