第四十八話〜焦りと燻り〜
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「僕の利用目的が身体データというのなら、僕はもう用済みだろう。今更僕を必要とする理由はなんだ?」
「私達はドクターからの依頼で貴方を連れてくるようにいわれただけですので、その質問には答えかねます」
「……」
「質問は以上ですか?なら――」
「最後に1つ」
「「「?」」」
「“いくつかの目的”と言ったが、1つが僕の確保、もう1つはギンガの捕縛」
ライは視線を彼女たちの足元に視線を向けながら、そう口にする。ライの視線の先には人が1人分入る大きさのトランクケースのようなものが置かれている。
「そして機動六課の襲撃。それが、僕が今確信を持って言える君たちの目的だ。それを踏まえた上で聞く」
「何ですか?」
「ヴィヴィオ……こちらが保護した児童の確保は目的に含まれるか?」
「「「……」」」
ライの質問でその場の空気が沈黙を迎えた。チンク、ノーヴェ、ウェンディの3人は無言を続けるが、ライには見えていた。ライが最後の問いを投げかけた時に3人の目が細まったことに。
「そうか…………なら、この交渉は決裂だ」
ライがその言葉を口にした瞬間、ウェンディが腕に装備していた盾のような装備、ライディングボードをライに向け発砲した。
着弾と同時に爆発が起こり、ライが隠れるように埃と煙が舞う。
「仕方ない。本意ではないが力尽くで連れて行く」
「最初からこうしてれば良かったんすよ」
「さっきのハチマキを逃した分、コイツを殴る」
3人は再び戦闘態勢を取りながら、煙に視線を向ける。だが、3人はこの時点で油断していた。データではライのことを知っていて、その突出していると言っても過言ではない戦闘力は知っていた。だが、三対一のこの状況で自分達の勝ちは揺らがないと、そしてどれだけライが足掻いてもこちらが苦戦することはないと思っている。
しかし、そんな考えは即座に否定された。
「“私”を侮るなよ、下郎」
静かに、だが、確かに聞こえたそのセリフに3人は背筋を凍らせた。
言葉が発せられたと同時に煙がはれ、『ソレ』はそこにいた。
「私から奪うことを宣言したのだ。奪われる覚悟は持っているな」
そこに立っている人物は、濃密な覇気と殺気を放ち一歩、足を踏み出す。
それだけで、彼女たち3人は萎縮し体を震わせる。いくら高い戦闘力を持っていても、実戦経験の少ない3人にその気配は刺激が強すぎた。
それでも姉としての威厳か、それとも生物としての本能か、チンクは己の中に残る意志に喝を入れ叫ぶ。
「気を抜くな!あれは――」
最後に何を叫ぼうとしたのかは分からなかった。何故なら、自分の後ろにいた筈のノーヴェが吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる音が響き
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