決勝戦〜中編2〜
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一学年の艦隊が薙ぎ払われる。
アルドワンが慌ててフォローに向かう。
だが、そこに続くのは後方――陣形を立てなおした、テイスティア艦隊からの掃射だ。
崩れる陣形を見るヤンの前で、アレス艦隊は見事に脱出に成功させてみせた。
ミスをしたのは一学年だが、それをあまり攻めるわけにもいかない。
包囲網の中にあって、アレス艦隊は断続的に効果的に攻撃を加えていた。
一気に勝負を決めたいと思っても、不思議ではない。
時間だな。
「アルドワン。全艦隊を一時的に後退させ、部隊を再編させよう」
『まだ敵は崩れていますが』
「それはこちらも同じだね。それに、時間切れだよ」
呟いた言葉とともに、アレス艦隊の遥か後方――敵艦隊の群れがゆっくりと近づいてきていた。
+ + +
『ピンチがないからといって、ピンチをわざわざ作ることもあるまい?』
「それが今まで耐えた後輩に対する言葉ですか、ワイドボーン先輩」
口を尖らせたアレスの言葉に、通信の先で小さな笑いが聞こえた。
『ふん。冗談だ、良く耐えた――褒めてやろう。さて、ローバイク』
『はっ』
『俺の可愛い後輩を、あいつらは随分といじめてくれたらしいな?』
『そのようですね』
『端的に言おう。俺は怒っている、奴らは潰すぞ?』
『言われなくても――私も同じ気持ちですから』
笑いあう言葉に、アレスは小さく息を吐きだした。
こちらの味方が近づいてきたと判明するや、ヤン艦隊は即座に後退して部隊を再編させている。
こちらも本隊が到着しているが、既にアレス艦隊とテイスティア艦隊は半数以上が損傷している。
数の上では同数といえないが、それでも先ほどまでに比べれば随分と気が楽だ。
緩やかに陣形を整えながら、アレスは時間に目をやった。
どちらが殲滅されるか、あるいは時間切れか。
これが最後の戦いになるだろう。
+ + +
『逃げますか』
「どうだろうね」
狭い筺体の中で、髪を撫でながらヤン・ウェンリーはモニターに目をやった。
残す時間は少ない。
損傷数からみれば、ここで正面から戦わずに逃げ回ったとしてもぎりぎり勝てるだろう。
ましてや、相手はワイドボーンだ。
策もなしに戦うのは少し骨が折れる。
その上、半数が殲滅したとしてもアレス艦隊はいまだ健在。
大人しく逃げた方がいいだろうかと、考えて、ヤンは首を振った。
相手は一万三千の敵に、今まで耐えてきた尊敬すべき相手だ。
その意思を――そして、彼の仲間の思いを一蹴できるほど、ヤンは恥知らずではないつもりだ。
仕事熱心とは言えないだろうが、それでも人として最低限の矜持はある。
「艦隊を横に、左から一学年、私、アルドワン
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