第三十三話 少し頭を冷やしてこい!
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。オフレッサーは血と肉で汚れているからと。その上で私に繋ぐ様にと命じた。
『黒髪の孺子(こぞう)、スクリーンを通してでも良い、俺の顔を見る勇気が有るか!』
スクリーンにオフレッサーの巨体が映った。装甲服は人血でどす黒く汚れ各処に肉片がこびり付いている。艦橋の彼方此方で恐怖に呻く声が聞こえた。司令長官はこれを予測したのか、確かに女性に見せられる物ではない。
「有りませんね、オフレッサー上級大将。卿はあまりに不細工で私の美意識には到底耐えられない。本当に人間ですか?」
皆が驚いて司令長官を見た。私も信じられない思いで司令長官を見た。この状況で司令長官はオフレッサーを嘲弄している。
『貴様……』
オフレッサーは呻くと司令長官を罵倒し始めた。“帝室の厚恩を忘れた裏切り者”、“卑劣漢”、“背徳者”、“運が良いだけの未熟者”、だが司令長官はその罵倒を聞いて笑い出した。声を上げて笑っている。演技とは思えない、本当に可笑しそうに笑っている。皆が先程まで感じていた恐怖を忘れて呆然と司令長官を見詰めた。
『貴様……、何が可笑しい!』
「可笑しいから笑っています。もう終わりですか? もう少し続けてくれると嬉しいですね、戦場は娯楽が少ないのです」
『貴様……』
オフレッサーの顔が怒りでどす黒く染まった。だがニヤリと笑うとまた話し始めた。
『あの女を下賜されたが爵位と所領は返上したようだな、それだけは褒めてやる、分をわきまえた賢明な振る舞いだ。元々平民にも劣る貧乏貴族だからな、伯爵夫人などと片腹痛いわ。平民の卿には似合いの女だろう、精々可愛がってやるのだな』
司令長官が吹き出した。指揮官席で腹を押さえながら笑っている。オフレッサーが猶も罵倒を続けたが司令長官が通信を切らせた。
「総参謀長、笑い死にしそうです。オフレッサーがあんな愉快な男だとは思いませんでした」
そう言うとまた笑い出した。
「閣下!」
鋭い声が上がった。ミューゼル少将が顔面を紅潮させている。姉を馬鹿にされて怒っているのだろう。
「何が可笑しいのです! あの野蛮人に愚弄されたのですぞ、笑いごとではありますまい!」
斬り付けるような口調だった。良く見れば怒りで震えている様だ。
「可笑しいですね、あの程度の事で私を怒らせる事が出来ると考えているんですから」
「……」
ミューゼル少将が言葉に詰まった。顔面が益々紅潮する。それを見て司令長官が苦笑を浮かべた。だがミューゼル少将はその事に益々檄した。
「閣下! 小官を前線に派遣して下さい! あの蛮族に……」
「その必要は有りません」
ヴァレンシュタイン司令長官は少将に皆まで言わせずに却下した。口籠る少将に司令長官が言葉を続けた。もう笑ってはいない。
「ミューゼル少将、卿はロイエンタール、ミッタ
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