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占術師速水丈太郎  ローマの少女
第三十七章
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を持つ神々しい中性的な顔の持ち主であった。今それがサン=タンジェロ城に舞い降りたのであった。
「さあ、ローマを守護する天使よ」
 速水はその天使に呼び掛ける。
「私と共に。今ローマを覆う悪しき存在を切り払うのです」
「そう、ミカエルですか」
 アンジェレッタはそれを見てすぐにその天使が何者なのかを悟った。見間違えようがなかった。
「それで戦いを終わらせると」
「そうです。御聞き下さい」
「!?」
 何故彼がここで聞くように言ったのかわからなかった。
「聞こえませんか。歌声が」
「歌声が」
「そうです、歌声です」
「そんなものは・・・・・・いや」
 それは確かにアンジェレッタの耳にも入ってきていた。少年の歌う声が。
「そんな・・・・・・この曲は」
「これはローマの曲なのですよ」
 速水が答える。それは牧童の歌う曲なのであった。

 僕は風が動かす木の葉までに多くになっている溜息を貴女に送ろう
 だが貴女はそんな僕を意に介さず僕はそのことを悲しむ
 ああ、そんな僕を慰める金のランプよ、御前の優しい灯も僕の心を癒せない

 ローマに伝わる古い牧童の歌。それが今天使の城に聴こえてきていたのだ。
「どういうこと、これは」
「おわかりになられませんか」
 速水の様子は変わりはしない。
「この歌の意味が」
「じゃあここでも」
「ですが月のカードは出してはおりません」
 これは嘘ではなかった。実際に今速水が手にしているカードには月のカードはなかった。その手にあるからそれははっきりとわかったのだ。


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